2022 Fiscal Year Research-status Report
Impacts of reduction of primary production on ecosystems in mass extinction events
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21K06355
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
吉田 勝彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主幹研究員 (70332244)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シミュレーション / 生態系モデル / 進化 / 飢餓状態への反応 / 生態系の時間変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Yoshida et al. (2019)で開発した生態系モデル(生態系の物質循環を精密に再現する数理モデル)を基盤として、生物の進化過程を導入し、生態系の物質循環と進化過程を同時に再現できる“生態系物質循環進化モデル”の予測能力を確認するため、実際の生態系を対象としたシミュレーションによって挙動解析を行った。その結果、生態系進化の初期に出現した生物の性質によって、生態系の時間変化の様相が影響を受けることが明らかとなった。この成果を論文にまとめ、学術誌に投稿した。 生物は餌不足に直面したときの生物の反応は、代謝を落として体内に蓄えられているグリコーゲンを消費するフェーズ1,さらに代謝を落として脂肪の酸化とタンパク質の分解を行って生命活動を維持するフェーズ2、タンパク質の分解が初期の30%から50%に達すると重要な組織の機能が損なわれて死に至るフェーズ3の3段階を経ることが知られている。それぞれのフェーズの長さと、代謝の低下の程度は生物の分類群によって、また、それぞれの種の生活史の中に餌不足の期間が含まれるかどうかによって様々な変異を持つことが知られている。このような反応様式と、それぞれのフェーズの長さが種によって異なり、さらにそれが進化過程で変化しうるプロセスをYoshida (2008)で開発していた食物網進化モデルと本研究で開発した生態系物質循環進化モデルに組み込んだ二つの生態系モデルを開発した。このモデルに基づいたシミュレーションを行って、絶滅のパターンについての解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
飢餓状態に対する生物の反応について、モデルに組み込むべきプロセスと具体的な数値を詳細に調査した上で生態系モデルを構築した。このモデルを用いて現在シミュレーションを行っているが、飢餓状態への生物の反応について、実際の生態系で働くプロセスが多数組み込まれている物質循環進化モデルにおいて考慮すべき事項が多く、モデルが精緻になりすぎたためにモデルの実装に手間取ったことに加えてプログラムの実行に当初想定よりも長い時間を要する状態になっており、十分なシミュレーションの回数を確保出来ておらず、信頼性のある議論を出来る状態にはまだ達していない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、シミュレーションの実行時間が比較的短く、十分なシミュレーションを繰り返すことが可能なYoshida (2008)の食物網進化モデルを基にしたモデルの方で重点的に研究を進める。それと同時に、物質循環進化モデルにおいて、平衡状態に近い状態の時に計算ステップをショートカットする仕様にするなどしてプログラムの高速化を図る。進行状況によって計算機環境の充実が必要な場合には、新たなワークステーションの導入し、多数の大規模計算を同時に進められるような体制の構築も検討する。これによって十分な回数のシミュレーションを行い、信頼性の高い議論が進められるだけのデータを集め、一次生産量が停止したときに絶滅しやすい生物の性質、生態系上での位置を明らかにする。
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