2022 Fiscal Year Research-status Report
東南アジア中新世後期におけるヒト上科・オナガザル上科の進化と生息環境の解明
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21K06360
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
國松 豊 龍谷大学, 経営学部, 教授 (80243111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日下 宗一郎 東海大学, 人文学部, 講師 (70721330)
西岡 佑一郎 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (00722729)
半田 直人 奈良女子大学, STEAM・融合教育開発機構, 特任助教 (60792009)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒト上科 / オナガザル科 / 中新世 / 東南アジア / 化石 / 哺乳類 / 古環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は新型コロナウイルス問題の影響のためにタイでの現地調査を見送らざるをえなかったが、本年度は渡航制限の緩和を受けて、2023年2月にタイ東北部ナコンラチャシマにおいて現地調査を行うことができた。霊長類化石を含む化石動物群集の構成や年代、生息環境を明らかにするため、ナコンラチャシマでは東北タイ珪化木博物館に保管されているナコンラチャシマ近郊出土の哺乳類化石の標本調査を実施した。それとともに、タイ側共同研究者らとともにナコンラチャシマ近郊の新しい化石産地を訪れ、予備的な調査を行った。博物館での標本調査はナコンラチャシマ近郊のプラプット・サンドピット出土の化石を中心に進めた。長鼻類は暫定的だが5タイプ(Stegolophodon cf. stegodontoides、 Stegodontid(new form)、Stegodontid(huge size)、Sinomastodon?、Stegodon)、ウシ科は2タイプが見られた。サイ化石は4種類ほど区別できそうで、これらは他のサンドピット(No.8)から見つかっている種類と共通する。南アジアや中国南部、タイ固有種が含まれると思われる。年代に関しては、ウマ科のHipparion、イノシシ科のTetraconodon、キリン科のBramatherium、長鼻目のStegolophodonなど800万年前以前に繁栄していたグループの他に、カバ科のHexaprotodonや長鼻目のStegodonやSinomastodonなど、700万年前以降のものも若干混じっていることから動物相の過渡期、おそらく700万年前ごろと現時点では想定している。化石霊長類の生息環境復元のため、東北タイ珪化木博物館所蔵の化石標本のうち長鼻目,イノシシ科,サイ科などから同位体分析用の追加サンプリングを行った。また、長鼻目2点とカバ科1点について,一つの歯から多数の同位体データを得るための連続サンプリングを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は新型コロナウイルス問題の影響でタイへの渡航を見送ることになり、現地調査が叶わなかった。2022年度は渡航規制がかなり緩和されてきたため、年度の終わり近く(2023年2月)にタイで現地調査を実施することができた。それにより、ナコンラチャシマ近郊のサンドピットから出土した霊長類化石を含む動物群集の化石標本の整理とデータ収集作業を再開した。また、タイでの現地調査の際に、化石を産出する新しいサンドピットに関する情報も得られ、実際に新サンドピットを訪れて予備的な調査を実施するなど、前年度に現地調査ができなかった遅れを取り戻しつつあるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度も東北タイ珪化木博物館との共同研究を継続し、ナコンラチャシマ近郊から出土した中新世の霊長類化石の記載、共伴する化石動物群集の分析・記載、生層序に基づく年代推定、安定同位体分析による古環境復元などを進めていく。2022年度の現地調査で得られた試料やデータの整理・分析・まとめを進めるとともに、2023年度中にタイ・ナコンラチャシマでの調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス問題の影響により2021年度はタイでの現地調査を見送ったため、一部の予算を2022年度に繰り越した。2022年度はコロナの影響による規制も緩和され、国内・国外出張も行えるようになったが、まだやや抑制的であったことと、2023年度にタイ側研究機関から借用した化石標本を輸送することになる可能性が出てきたため、予算の一部を繰り越すこととした。2023年度の予算については、タイでの現地調査、調査研究に必要な物品の購入、標本の輸送などに使用する予定である。
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