2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K06374
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
田川 義晃 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50303813)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大脳 / 神経回路形成 / 発達 / 神経活動 / 脳梁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、哺乳類大脳の代表的な長距離神経回路である脳梁軸索投射をモデルとして、活動依存的な神経回路形成機構の解明をめざしている。本年の成果は以下の通りである。(1)脳梁投射細胞同士の同期活動が発達期の投射形成に重要であることの検証を進めた。(2)脳梁投射に関わる分子機構の一端として、Ca2+チャネルCav1.2とNa+チャネルNav1.2の関与を示す結果を得た。(1)では、神経活動を抑制する分子ツールKir2.1の時期特異的発現実験から、マウスの脳において、生後10-15日の自発的同期活動が脳梁軸索投射形成に重要であることを見出して論文発表を行った。(2)では、Cav1.2の多数のヒト疾患変異を用いた研究から、Cav1.2の機能亢進型変異が脳梁投射形成を障害すること、さらにNav1.2の疾患変異も用いた研究から、Cav1.2の機能亢進疾患変異は脳梁軸索投射とその前の段階の細胞移動の障害を引き起こすが、Nav1.2の機能亢進疾患変異は脳梁軸索投射の障害のみを引き起こすことを明らかにした。さらにCav1.2とNav1.2の変異体を用いて進めた研究で、細胞移動中に過剰なCa2+の流入があると移動が障害されること、軸索を中心とした過剰なCa2+の流入は神経細胞の極性形成を障害することを示す結果が得られた。これらの成果に関して論文発表を準備するとともに、新たに得られた仮説を検証する実験を進めている。また、Cav1.2の疾患変異の下流ではたらくシグナル分子やメカニズムを明らかにする研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直実に論文発表につながっており、さらに実験を進める中で新たな現象と新たな仮説が得られ、それを検証する実験へと展開している。
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Strategy for Future Research Activity |
初期回路形成過程の未熟な神経細胞において、細胞体、樹状突起、軸索のどこでどんなパターンの神経活動(Ca2+流入を含む)が起こると形態形成がどう変化するかを確かめる実験を進める。これは、神経細胞の極性形成のメカニズムを明らかにするという基礎神経生物学の知見につながるとともに、神経発達症の原因となっているCa2+、Na+イオンチャネルの疾患変異が神経回路形成に及ぼす影響を明らかにするという疾患基礎研究に資する成果が期待できる。また、Cav1.2の疾患変異の下流ではたらくシグナル分子やメカニズムを明らかにする研究を進める。
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Causes of Carryover |
予定していた出張(海外)の旅費が新型コロナやオンライン化の影響で使用しなくて済んだこと、一部の実験消耗品を他経費を含めて計画的に購入したために使用しなくて済んだことが理由である。研究計画そのものは順調に進んでおり、次年度に有効に使用する。
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