2023 Fiscal Year Research-status Report
抑制性シナプス後部の分子構成解明と特定の抑制性シナプス操作技術の開発
Project/Area Number |
21K06377
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山崎 世和 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60581402)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 抑制性シナプス / アデノ随伴ウイルス / シナプス伝達 / シナプス分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳には様々な種類の抑制性神経細胞が存在し、種類の抑制性シナプスを形成しているが、どの種類のシナプスにどのような分子が集積しているのかよくわかっていない。本研究では抑制性シナプスにおいて、特にそのシナプス後部にどのような分子が存在しているのかを明らかにし、さらにそれらの分子を人為的に操作することによって、任意の抑制性シナプスを選択して操作する技術を開発することを目的としている。 本研究では、近接依存性ラベル化酵素TurboIDを抑制性シナプス後部に局在させ周辺タンパク質をビオチン化しそれらを同定する。TurboIDのシナプス局在には、ALFAタグ-膜貫通領域-TurboID融合タンパク質(Labeling module)を錐体細胞に、抗ALFAナノボディ-GPIアンカー融合タンパク質(Targeting module)を抑制性神経細胞に発現させることで行う。これら二つのタンパク質はTranssynapticに相互作用し、抑制性神経細胞と錐体細胞の接合部、すなわちシナプスに集積することが期待される。 これまで、Labeling moduleとTargeting moduleを設計、AAVベクターに組み込み、マウスの脳で発現することを確認していた。一方で、次のステップであるプロテオーム解析を行うため、より広範な脳領域により強く発現させることが必要であった。よって本年度はこの点を検討した。広範な発現領域を確保するために、AAVの血液脳関門透過型の血清型であるPHP.eBを使用することにしたが、作成時の細胞密度・Plasmid導入量を最適化することでより高いタイターのAAVを安定して確保することが出来るようになった。また、CMVのmini promoterやCre依存的CAGプロモーター、Tet-off systemを組み込み、目的細胞に高いレベルでタンパク質が発現することが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の計画では、最終年度である本年度には、抑制性シナプス後部を特異的に標識するLabeling moduleとTrageting moduleの発現系を確立し、プロテオーム解析によって分子組成を解析、それぞれの抑制性シナプスのマーカー分子を同定、それらを用いて任意の種類の抑制性シナプス操作Moduleを作成している予定であった。しかしながら、これまでLabeling module、Targeting moduleの発現には成功していたものの、その発現領域、発現量が十分でなく、これを改善するための検討に時間を予定以上に費やしてしまったため、当初の予定よりも遅れることとなった。しかしながら、本年度において、AAV産生系の再検討とプロモーター等の検討を行ってきて、ポジティブな結果を得ることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定より遅れてしまったが、今後は本年度に行った実験結果を元に新しくAAVベクターを作成、得られたAAVによってLabeling module、Targeting moduleがそれぞれ錐体細胞、抑制性神経細胞に高いレベルで発現することを確認する。そしてこれらを発現し抑制性シナプス後部分子をビオチン化ラベルした脳からタンパク質を精製、シナプス後部の分子構成を明らかにする。この実験を、錐体細胞が作る様々な抑制性シナプスにおいて行い、その結果を比較、それぞれのシナプスに特徴的な発現分子を同定し、これらとシナプス操作分子の融合タンパク質を作成することで、特定の抑制性シナプス操作技術の確立を目指す。
|
Causes of Carryover |
三年の研究期間をいただいて計画していた本研究において、抑制性シナプスのプロテオーム解析の系の立ち上げに想定していた以上に時間がかかってしまった。そのため、当初計画していた抑制性シナプスそれぞれにおける分子構成の同定と、その後の操作Moduleの確立が、予定していた三年目において十分検討することが出来なかった。プロテオーム解析の系の立ち上げについては本年度の検討によってめどが立ったことから、今後は当初予定していた順番で実験を計画していくことになるが、これを遂行するため、次年度使用額が生じることとなった。これは、次年度のプロテオーム解析を本格的に始動し、分子構成の同定とシナプス操作Moduleの開発を進めていくために使用する計画である。
|