2021 Fiscal Year Research-status Report
脳内自己回復機構に基づく新規ストレス性不安障害治療法の開発
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21K06380
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
田村 英紀 星薬科大学, 先端生命科学研究所, 准教授 (80437516)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ストレス回復 / ソマトスタチン / 不安 / 青斑核 / 中脳水道灰白質 / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
青斑核は、ストレス応答に重要な役割を果たしている脳領域の一つである。実際、ストレス環境下での青斑核の過活動を人工的に抑制すると、ストレス性不安行動が軽減することが報告されている。しかしながら、青斑核の神経活動を制御する生体内メカニズムは明らかではない。我々は、これまで青斑核のソマトスタチンシグナルが、ストレス回復に関与することを見出した。本年度は、青斑核に投射するソマトスタチン作動性神経の同定を目指した。逆行性神経トレーサーを青斑核に投与した結果、その陽性反応が、中脳水道灰白質のソマトスタチン発現細胞で認められた。そこで、中脳水道灰白質-青斑核経路間の機能的なシナプス結合を明らかにするために、ソマトスタチンのプロモーター制御下で cre 酵素が発現する Sst-cre マウスを用いて、中脳水道灰白質のソマトスタチン発現細胞特異的にチャネルロドプシン (ChR2) を発現させた。青斑核のノルアドレナリン産生細胞をホールセルパッチクランプ法によって電位固定し、光刺激を与えた結果、興奮性および抑制性シナプス電流が発生した。また、光刺激による中脳水道灰白質の軸索の活性化は、青斑核の自発発火を抑制した。この光刺激による発火抑制は、GABA 受容体アンタゴニストによって阻害された。青斑核の自発発火の抑制は、ソマトスタチンアナログの投与でも同様に認められ、その際、ソマトスタチン受容体サブタイプ 2 の細胞内陥入が引き起こされた。以上のことから、中脳水道灰白質ソマトスタチン発現細胞の軸索は、青斑核と抑制性シナプスを形成していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、青斑核へ投射するソマトスタチン作動性神経の同定に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレス回復に関わる標的遺伝子を同定するために、ストレス感受性マウスおよびストレス耐性マウスの発現遺伝子の差異を RNA-seq 解析によって明らかとする。
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Causes of Carryover |
(理由) オプトジェネティクスおよびパッチクランプのセットアップが当初予定よりも短縮できたため。 (使用計画) 遺伝子発現解析に関わる消耗品を購入する予定である。
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