2022 Fiscal Year Research-status Report
脳内自己回復機構に基づく新規ストレス性不安障害治療法の開発
Project/Area Number |
21K06380
|
Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
田村 英紀 星薬科大学, 先端生命科学研究所, 准教授 (80437516)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ストレス回復 / ソマトスタチン / 不安 / 青斑核 / 中脳水道灰白質 / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、我々は中脳水道灰白質(PAG)ソマトスタチン発現細胞が青斑核(LC)ノルアドレナリン作動性ニューロンにシナプス結合していることを明らかとした。しかしながら、この神経回路の機能的役割は明らかではない。そこで、本年度は、まず PAG-LC ソマトスタチン発現細胞が急性ストレス負荷時に活性化するか否かを検討した。逆行性神経トレーサーにより PAG-LC 神経を標識すると共に蛍光 in situ hybridization および蛍光免疫染色によって、PAG-LC ソマトスタチン発現細胞における c-Fos タンパク質(神経活動マーカー)の発現の有無を調べた。その結果、成熟マウスに、急性拘束ストレスを負荷した結果、多くの PAG-LC ソマトスタチン発現細胞で c-Fos 陽性反応が認められた。次に、ストレス負荷によって活性化した PAG-LC ソマトスタチン発現細胞から放出されるソマトスタチンおよび GABA のはたらきを、Cre/loxP システムを搭載した逆行性アデノ随伴ウイルス(rgAAV)shRNA ノックダウンベクターによって検討した。その結果、PAG-LC ソマトスタチン発現細胞のソマトスタチン遺伝子を選択的にノックダウンしたマウスでは、急性ストレス負荷後の不安様行動が増大した。また小胞 GABA トランスポーター(Slc32a1)遺伝子をノックダウンすることで、GABA の放出を抑制したマウスにおいても、ストレス性不安様行動が増大した。以上のことから、PAG-LC ソマトスタチン発現細胞から遊離する神経伝達物質は、ストレス性不安様行動を負に制御していることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、青斑核へ投射する中脳水道灰白質ソマトスタチン発現細胞の機能の一端を明らかにしたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
青斑核へ投射する中脳水道灰白質ソマトスタチン発現細胞の神経活動が不安様行動に与える影響をオプトジェネティクスを用いることで明らかにする。
|
Causes of Carryover |
(理由) 選択的神経回路における特定遺伝子の発現抑制系が当初予定よりも安価で成功したため。 (使用計画) マウス脳内微量薬物投与システムに関わる消耗品を購入する予定である。
|