2021 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中後の大脳新皮質広域神経回路再構築メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K06386
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
酒井 誠一郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 研究員 (40709747)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 大脳新皮質 / 神経回路 / カルシウムイメージング / RNA-Seq |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞後の機能回復には、失われた機能を代償する神経回路の構築が重要であるとされているが、その詳細は未解明である。そこで脳梗塞モデルマウスを用いて、脳梗塞後に構築される神経回路の構造と神経回路構築の分子メカニズムを解析した。 脳梗塞後いつ、どこに、どのような神経回路が構築されるのか明らかにするため、カルシウム感受性蛍光タンパク質GCaMPを発現するマウスの大脳新皮質一次体性感覚野に脳梗塞を作製し、広域カルシウムイメージングによって脳梗塞8週間後までの神経活動を継時観察した。麻酔下の自発神経活動および後肢刺激に対する応答を解析した結果、脳梗塞によって低下した梗塞巣周囲の神経活動が2-3週間後にかけて回復するのが見られた。また、自発神経活動の相関から皮質領野間の機能的結合を推測した結果、梗塞巣周囲を中心とした皮質領野間の機能的結合が脳梗塞後に増強することを発見した。脳梗塞後に増強した機能的結合のハブとなっている領域を破壊すると感覚運動機能が再び低下したことから、この領域が脳梗塞後の機能回復に重要であることが示唆される。 脳梗塞後の神経回路構築の分子メカニズムを明らかにするため、機能的結合の増強が見られた梗塞巣周囲の組織からFACSで神経細胞を単離し、RNA-Seqによって脳梗塞後の遺伝子発現変化を解析した。その結果、脳梗塞1-2週間後にかけて神経修復に関連する遺伝子の発現が増加することを発見した。これら遺伝子が脳梗塞後の神経回路構築において重要な役割を担っていると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
広域カルシウムイメージングの解析により、脳梗塞後の機能回復に重要な神経回路を発見した。これにより研究の次のステップである分子メカニズムの解析へと順調に進むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
脳梗塞後の神経回路構築を広域カルシウムイメージングによって解析した結果を論文にまとめる。脳梗塞後の神経回路構築に重要な遺伝子のノックアウトおよび強制発現による効果を遺伝子発現解析や生理学実験により検証し、その機能を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際会議への参加を新型コロナウイルス感染症拡大により取りやめたため次年度使用額が生じた。繰り越し分は2022年度に開催される国際会議へ参加するために使用する。
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