2022 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中後の大脳新皮質広域神経回路再構築メカニズムの解明
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21K06386
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
酒井 誠一郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 研究員 (40709747)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 大脳新皮質 / 神経回路 / カルシウムイメージング / RNA-Seq |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞後の機能回復には、失われた機能を代償する神経回路の構築が重要であるとされているが、その詳細は未解明である。本研究では、大脳皮質の脳梗塞モデルマウスを用いて、脳梗塞後に構築される代償性神経回路の再構築メカニズムを研究している。 昨年度行った広域カルシウムイメージングによる機能的結合の解析において、脳梗塞巣周囲の機能的結合が脳梗塞後に強化されていた。そこで、この神経結合が脳梗塞後の機能回復に寄与するのか検証実験を行った。脳梗塞巣周囲の神経結合をDREADDを用いて特異的に活動抑制すると感覚運動機能が低下したことから、この神経結合が感覚運動機能の回復に重要であることが示された。また、急性スライス標本を用いたパッチクランプ記録によりシナプス伝達の強度を解析した結果、脳梗塞巣周囲のシナプス結合が実際に強化されていた。 脳梗塞後の神経回路再構築の分子メカニズムを明らかにするため、単離した神経細胞のRNA-SeqおよびシングルセルRNA-Seqによる遺伝子発現解析、ATAC-Seqによるオープンクロマチン領域の解析を行った。カルシウムイメージングで機能的結合強化の見られた脳領域では、脳梗塞後の神経修復に関わる遺伝子群の発現増加が見られた。また、それら遺伝子の転写調節領域にはいくつかの転写因子結合モチーフが濃縮していた。それら転写因子のうちのひとつをノックアウトしたマウスでは脳梗塞後の機能回復が阻害されていたことから、この転写因子が神経回路再構築を誘導していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳梗塞後の機能回復に重要な神経回路を特定することに成功し、神経回路再構築の分子メカニズムを解明するための次世代シークエンス解析の実験も順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
転写因子ノックアウトマウスの生理学実験、行動実験、および次世代シークエンスによる遺伝子発現解析を行い、神経回路再構築を誘導する分子メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会や研究会の開催中止あるいは参加を取りやめたこと、および2023年4月の研究室移転に伴って年度末に予定していた実験を延期したことにより研究費の残額が生じた。未使用金は、2023年度へ延期した実験に使用する。
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Research Products
(2 results)