2021 Fiscal Year Research-status Report
ドーパミンとコトランスミッターから探る学習・忘却メカニズムの解析
Project/Area Number |
21K06388
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 大介 東京大学, 定量生命科学研究所, 講師 (80588377)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 記憶学習 / ドーパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエの嗅覚記憶は嗅覚記憶中枢であるキノコ体へ嗅覚情報と価値情報が入力することで形成される。価値情報の伝達はドーパミンニューロンからの入力に依存するため、ドーパミンが記憶形成の中心的な役割を担うと考えられてきた。本研究ではドーパミンニューロンがセカンドトランスミッターを放出し、それらが嗅覚記憶においてドーパミンと反対の作用を持つことを行動実験によって検証した。忌避系ドーパミンニューロンからはグルタミン酸、報酬系ドーパミンニューロンからはGABAが放出され、それぞれ罰記憶・報酬記憶の安定化を遅延させる効果があることがわかった。キノコ体におけるセカンドトランスミッターの受容体についても調べたところ、グルタミン酸に対してはmGluR受容体、GABAにはGABA-A受容体が同様の忘却抑制機能を持つことを見出した。また、外部刺激によってキノコ体γ細胞軸索にグルタミン酸が放出されることをイメージング解析で明らかにしたが、その放出元の細胞については今後の課題である。 キノコ体γ細胞軸索に放出されるグルタミン酸はキノコ体の他にも出力細胞へ伝達される可能性が考えられたため、出力細胞におけるグルタミン酸受容体の機能を調べたところ、mGluR受容体とGluCl受容体が罰記憶に必要であることがわかった。これらの結果から罰記憶におけるグルタミン酸シグナルはキノコ体においては記憶の安定化抑制を担うが、出力細胞においては記憶形成・維持を促進し、両細胞で競合する構造をとっていることがわかった。今後はこのメカニズムの詳細と生物学的な意義について研究を掘り下げていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動実験データの取得に関しては想定以上に進んでいるが、イメージングデータに関してはデータ取得条件の検討に終始した。初めはセカンドトランスミッターとしてのグルタミン酸やGABAの放出タイミングが予測できなかったため、様々な条件を試行錯誤する必要があったが、行動実験の詳細なデータが取得されるとともにその条件を概ね絞り込むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
行動実験データは8割超取り終わっているので、イメージングデータの取得に集中する。グルタミン酸のイメージングに関しては実験方針も固まり、比較的進んできてはいるが、GABAの方はセンサーが機能しているか、外部刺激に応答するかどうかについても未だ検討段階のため、こちらにも着手していく。
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Causes of Carryover |
補助金及び基金の一部の範囲内で研究を遂行したため。
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Research Products
(1 results)