2023 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of the roles of astrocytes for social memory
Project/Area Number |
21K06407
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
服部 剛志 金沢大学, 医学系, 准教授 (50457024)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 社会性記憶 / アストロサイト / 神経回路形成 / シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
社会性行動はヒトの生存や生殖において不可欠な行動であり、社会性行動の一つである社会性記憶は他の個体についての記憶です。最近、社会性記憶の神経回路が同定され、神経細胞による社会性記憶の形成メカニズムが明らかになりつつあります。しかしながら、同記憶の形成において、グリア細胞(脳において神経細胞以外の細胞)の重要性や役割については、ほとんど解明されていません。本研究では、グリア細胞の一種であるアストロサイトの社会性記憶の形成における役割を明らかにするために、アストロサイトにおいてのみCD38という遺伝子を欠損させたマウス(CD38 AS-cKOマウス)を作成し、解析を行いました。 同マウスは活動性、不安、子育て行動などに常は見られないにもかかわらず、社会性行動における社会性記憶のみが障害されるという特徴的な行動異常を示しました。社会性行動に関わる脳の領域おける神経回路を調べた結果、神経同士の結合部位であるシナプスの数の減少、シナプスの形にも異常が見られました。更に、この原因としてアストロサイトのCD38が欠損すると細胞内のcADPRという分子が減少し、神経細胞のシナプス形成を促進する分子であるSPARCL1という分子が減少し、神経細胞に十分に供給されないことが分かりました。つまり、生後の脳の発達期において、アストロサイトという細胞が社会性記憶の神経回路形成に重要な役割を果たしていることが明らかになりました。 我々は、社会性記憶の形成にアストロサイトが関与するという世界初の発見を論文発表しました(Hattori et al., EMBO J, 2023)。本研究成果は、社会性の障害を持つ自閉症スペクトラム障害や、老化に伴い神経のシナプスが減少するアルツハイマー病などの神経変性疾患において、アストロサイトを標的とした治療へと発展する可能性を示します。
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