2021 Fiscal Year Research-status Report
中枢時計視交叉上核におけるシナプス伝達の機能的性質と役割の解明
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21K06422
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前島 隆司 金沢大学, 医学系, 准教授 (70399319)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 概日リズム / 中枢時計 / 視交叉上核 / GABA作動性伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢概日時計として機能する視交叉上核(SCN)は、異なった神経ペプチドを発現する複数種のGABA作動性神経で占められ、クラスターを作る各タイプの神経が群内及び群間で接続して神経回路を形成している。個々の神経は自律的に概日リズムを生じるが、安定した時刻情報の生成と、外界の明暗リズムに対する同調機能の発現には回路の形成が不可欠である。しかしながら、その作動原理は未だ十分に解明されていない。本研究では、各神経タイプ間のGABA作動性シナプスの機能的性質とその日内変動を調べ、神経活動の同調作用や日長の符号化に関わる機能的役割を明らかにする。 AVP神経から特異的にGABA放出能を欠損させた遺伝子改変マウスは、フリーラン行動の開始時刻と終了時刻が乖離し、活動時間が5時間以上も延長する異常を示した。また、in vivoマルチユニット記録法によりSCN回路の神経活動を観察すると、正常マウスでは昼に高く、夜に低い単峰性のリズムを示すが、改変マウスでは夜にもピークが現れる二峰性のリズムを示した。そして、動物の行動は、その神経活動が減弱する時間帯に現れることが観察された。この結果は、AVP神経からのGABA作動性出力が、マウスの行動時間を制御する日長の符号化に関与することを示唆している。これまでに、個々の神経が持つ日内リズムの同調性が日長の符号化に関係するというモデルが提唱されている。そのため、細胞集団の活動ではなく、個々の神経の活動を観察する必要性が高まった。そこで、成体マウスの脳スライス標本において、SCN内の個々の神経細胞の活動を計測する手段として、穿孔型多点電極アレーを使った多点記録法を構築した。これまでに、24~48時間連続して、一つの細胞由来とみなされる活動電位を計測でき、野生型マウスにおいて、ピーク位相は異なるが、昼の時間に活動を高める細胞が多く観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
穿孔型多点電極アレーを使った多点記録法を構築し、成体マウスの脳スライス標本において、SCN内の個々の神経細胞の活動を計測することができた。しかしながら、恒暗、短日、長日条件で飼育されたマウスや、遺伝子改変マウスを用いた計測がほとんどなされなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き多点記録法を用いて、異なった明暗サイクル条件下で飼育されたマウスや、遺伝子改変マウスから摘出した脳スライス標本において、SCN神経細胞の活動を記録する。さらに、スライスパッチクランプ法を用いて、AVP⇔AVP、VIP⇔VIP、AVP⇔VIPの神経ペアにおけるシナプス伝達の日内リズムを観察する。GABA作動性シナプス後電流の振幅、減衰定数、出現確率などを昼と夜で計測し、それぞれのパラメータに差がみられるか検証する。
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Causes of Carryover |
感染症対策により一部の学会の参加を見送ったため旅費が削減された。また、半導体サプライチェーンが混乱しており、電気記録用増幅器の購入が年度内に間に合わなかったため余剰金が生じた。次年度、増幅器の購入にあてる。
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Research Products
(1 results)