2022 Fiscal Year Research-status Report
大脳基底核「ハイパー直接路」が運動調節に果たす機能の解明
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21K06430
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
纐纈 大輔 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任研究員 (20437289)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大脳基底核 / 運動調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳基底核は運動関連皮質と強い神経連絡をもっており、運動制御に大きな役割を持つことが分かっている。皮質からの運動情報は大脳基底核内では“① ハイパー直接路”、“② 直接路”、“③ 間接路”の3つの経路に分かれて、最終的に淡蒼球内節(GPi、大脳基底核の出力部位)に到達するが、それぞれの経路が運動制御においてどのような役割を担っているのか未だによく分かっていない。そこで本研究では、サルで可能となった経路選択的にニューロンの神経伝達を阻害できる技術を用いて、大脳基底核内の各経路を選択的に遮断することで、動物に現れる運動障害や神経生理学的な変化を調べ、大脳基底核が担う運動制御機構の詳細を明らかにしたい。本研究では霊長類動物であるサルを用いて、大脳基底核内の1つの経路である“ハイパー直接路”が運動調節に果たす機能を明らかにする。 ある特定の神経経路を選択的に遮断する方法をサルに応用している例はこれまでに少なく、世界的に見ても独創的な技術である。 大脳基底核の構造は霊長類とマウスなどのげっ歯類では大きく異なる。最終的にヒトの運動調節メカニズムを理解するためには、ヒトにより近い霊長類動物であるサルを用いることが必要である。またより詳細な運動機能を理解するためには、複雑な運動課題の遂行が可能なサルを使うことが重要である。そこで動物にチェアーに座らせた状態で運動課題を遂行できるように訓練した。タッチパネルを用いたリーチング課題、単純選択課題で90%以上の正答率を示した。また覚醒下での大脳基底核の細胞活動記録を行い、ヒトと同じような神経活動と細胞応答性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動調節機能の神経活動メカニズムを明らかにするために、運動課題遂行中の動物から細胞活動を記録する必要がある。そこで動物に運動課題を十分にトレーニングした。チェアーに座らせた動物の前面にタッチパネル・モニターを置き、リーチング課題を行った。1ー2ヶ月程度で、課題を習得し、90%以上の成功率でモニター上のターゲットにタッチすることが可能となった。またモニター上の複数の光刺激から、1つの正解ターゲットを弁別する選択課題の習得にも成功し、90%以上の正答率を示した。また大脳基底核の細胞活動記録法も確立し、線条体、淡蒼球内節、淡蒼球外節、視床下核の自発発火頻度を測定した。また、運動皮質への単発の電気刺激に対する応答も記録した。ヒトと同じような細胞活動を示した。以上のように、動物の運動課題の習得、大脳基底核からの細胞活動記録の記録を行い、本研究課題の遂行はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
運動皮質→STN投射ニューロンの神経伝達を選択的に阻害することで、大脳基底核内の“ハイパー直接路”の選択的遮断を行い、“ハイパー直接路”の運動調節に果たす役割を明らかにする。選択的遮断の前後で、課題の正解率、反応速度、リーチングの軌跡などを測定し、どのような運動が障害されたのか解析する。また大脳基底核の細胞活動も記録する。GPiは健全な状態では運動皮質の電気刺激に対して三相性の反応を示すが、選択的経路遮断後にどのように反応が変化するか調べる。またニューロンの自然発火頻度や発火パターンなども調べ、選択的遮断により大脳基底核内の神経連絡経路がどのように神経生理学的に変化したかを調べる。
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