2023 Fiscal Year Research-status Report
疾患iPS細胞を用いた多発性硬化症に対するドネペジルの有効性と作用機序の解明
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21K06432
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
今村 宰 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生化学, 准教授 (40534954)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ドネペジル / iPS細胞 / 脱髄疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症(MS)は臨床経過により再発寛解型(RRMS)、二次性進行型(SPMS)、一次性進行型(PPMS)に分類され、MS患者の約85%がRRMSとして発症し、そのうち約半数が再発とは無関係に症状が進行するSPMSへ移行する。近年、ヒトiPS細胞技術の進展により、患者iPS細胞から分化誘導した神経系細胞を用いることで中枢神経系疾患の病態を生体外で再現できることが示されている。本年度は、健常者由来iPS細胞、RRMSおよびSPMS患者由来iPS細胞 (RRMS-iPSC、SPMS-iPSC)を神経前駆細胞へ分化誘導後、レチノイン酸とSonic hedgehogアゴニストを添加して作製したオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の細胞表現型解析を行った。RRMS-iPSCおよびSPMS-iPSC由来OPCは健常群に比べてoligosphere形成能が低下していた。形成されたoligosphereをBrdU標識とTUNEL染色による増殖能とアポトーシス活性を評価したところ、RRMS-iPSC由来OPCでは増殖低下のみが認められたのに対し、SPMS-iPSC由来OPCでは増殖低下とアポトーシスの誘導が観察された。次に形成された各群のoligosphereをディッシュに接着させ、長期培養した後、オリゴデンドロサイト(OL)への分化能を免疫染色により検討した。その結果、RRMS-iPSCおよびSPMS-iPSC由来OPCから一部の細胞がMBP陽性OLに分化していることを確認した。しかしながら、OLへの分化傾向に実験ごとのばらつきがあり、分化異常の有無については結論を出すまでに至っていない。MS-iPSC由来OPCで得られた細胞表現型に対するドネペジルの効果を調べたところ、oligosphere形成能、BrdUの取り込み率、TUNEL陽性細胞数に統計的な優位差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RRMS-iPSCおよびSPMS-iPSC由来OPCを用いた解析により新たな細胞表現型を見出すことができた。しかしながら、OLへの長期培養による分化誘導解析ではMBP陽性細胞を認めるも実験ごとのばらつきが大きく、培養条件のさらなる検討が必要な状況である。また、OLへの分化誘導条件の最適化に時間を要したため、患者iPS細胞から分化誘導したOPCとニューロンの共培養系を用いた髄鞘化解析についても当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
成熟OLへの分化誘導条件を最適化した後、本年度実施予定であった健常者およびMS患者由来のiPS細胞から分化誘導したOPCをセルソーターあるいは磁気ビーズを用いて純化し、ニューロンと共培養することによりOLの髄鞘化をin vitroで再現し、髄鞘形成における機能面の差異について検討を行い、疾患モデルへの有用性を検証する。また、MS-iPSCで得られた病態表現型に対するドネペジルの有効性や毒性などの影響についても検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度に計画していた研究が実施できなかったため次年度使用額が生じた。繰り越した余剰金は共培養実験等に必要となる培養関連試薬や消耗品の購入費に充てる予定である。
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