2023 Fiscal Year Research-status Report
Subcellular analysis of the mechanism underlying ectopic spike generation in axon
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21K06434
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
神谷 温之 北海道大学, 医学研究院, 教授 (10194979)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 軸索 / 海馬 / サブセルラー記録 / 数理モデル解析 / 同期リズム形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、例外的に大型の海馬苔状線維の軸索終末からサブセルラーパッチクランプによる直接記録を行い、また、苔状線維を模した最新の数理モデルに基づくシミュレーションを組み合わせ、遠位軸索における異所性スパイク発生の検証、異所性スパイクの発生部位の同定、シミュレーションによる異所性スパイクの数理モデル解析などを行う。通常の活動電位発生部位である軸索初節部ではなく、遠位軸索で活動電位が生じる、いわゆる「異所性スパイク」 について直接的に検証し、遠位軸索における異所性スパイクの発生機構について追及する。昨年度までに、カリウムチャンネルブロッカーである4-アミノピリジンの遠位軸索への局所投与による異所性スパイクのバースト発火を生じること、およびシミュレーションによる数理モデル解析で再現できることを明らかにした。本年度は、生理的条件下で異所性スパイクの発生を引き起こす可能性について検討をすすめ、入力線維に強い繰り返し刺激を与えると、刺激後にも継続して活動電位の発火が継続する後発射を生じ、これが遠位軸索由来の異所性スパイクによる可能性をマウス海馬での電気生理実験で示した。また、シミュレーションを用いた検討で、入力線維の繰り返し刺激に遠位軸索の軽度の脱分極を組み合わせることで、異所性スパイク発生による後発射の発生を再現することができた。苔状軸索のカリウムチャンネルは顕著な不活性化を示すが、不活性化を除去したモデルを構築し軸索カリウムチャンネルをこれに置換したところ、異所性スパイクによる後発射が完全に消失することを示した。カリウムチャンネルの不活性化の累積が異所性スパイクの発生に促進的に作用する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス海馬スライス標本を用いた実験的研究で、カリウムチャンネルブロッカーである4-APの投与や生理的な繰り返し刺激により遠位軸索由来の異所性スパイクを生じ、海馬苔状線維を模した数理モデルに基づくシミュレーションでもこれが再現できることを示した。実験と理論の両面からの研究が相互補完的に進捗していることから、おおむね順調に研究が進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これらの結果に関する論文投稿を進めるとともに、マウス海馬スライスを用いた単一苔状線維終末からの直接記録による実験的解析をさらに進め、反復刺激による異所性スパイク発生のメカニズムを追求し、シミュレーションによる検討も行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究では海馬苔状線維が強い反復刺激に応じて刺激後も継続して発火する後発射を誘発し、これが通常のスパイク発生部位である軸索初節以外の遠位軸索から異所性に発生している可能性を示唆する結果を得た。2023年度は、実験で観察した海馬苔状線維の強い反復刺激が後発射を誘発する機序を追求するために、数理モデルを用いたシミュレーション解析に重点をおいて研究を進めた。このため、多くの研究経費は必要とせずに研究が経過した。ただし、論文作成は年度内に終了せず、次年度に投稿を予定しているため、当該研究の成果発表に向けた論文校正費や論文投稿料および掲載費として次年度の使用を予定している。論文リバイスに際して追加実験が要求されることも想定されるため、このための消耗品や動物(マウス)購入の費用に充てることも計画している。
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Research Products
(7 results)