2021 Fiscal Year Research-status Report
Thalamic regulation of sleep depth
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21K06435
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
本城 咲季子 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (30551379)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 視床 / ノンレム睡眠 / 眠りの深さ / 徐波 / 細胞除去 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は脳部位特異的に細胞除去を行う実験系の確立を行った。 本研究計画の予備的なデータとして、これまでに蓄積した脳の各部位の細胞除去スクリーニング実験があった。これまでのスクリーニングはジフテリアトキシン A 断片(DTA)をマウス脳に局所的に発現させる事によって細胞除去を行っていた。このDTAは培養細胞においては非常に効率的に細胞死を誘導する事が知られており、一分子の発現で充分と言う報告さえある。しかし、予備的データについて、睡眠覚醒、脳波・解析の結果に加え脳組標本の染色・解析を行って精査した結果、DTA断片による細胞除去効果は脳部位、細胞種によってばらつきがある事が明らかとなった。一部の脳領域でCMVなどの強いプロモーター下で4週間の発現を行っても、神経細胞の細胞死には至らない事を確認した。 そこで我々は、in vivo で神経細胞をより確実に除去出来る実験系を探索し、その結果活性型アポトーシスの導入はDTA過剰発現より効率的に細胞死を誘導する事を見出した。複数のプロモーター、脳領域、神経細胞種で検討を行った結果、tobacco etch virusたんぱく質切断酵素(TEVp)およびTEVpによって切断を受ける事で活性化するCaspase(taCasp3)の導入がDTAより安定して細胞死を誘導出来る事を確認出来た。この実験系を用い、覚醒状態の維持に貢献するとされている視床神経群の除去を行った結果、視床由来とされる脳波「紡錘派」に加えて、「徐波」もノンレム睡眠中に減衰する事を明らかにした。また、大脳皮質の複数脳領域においてもこのTEVp+taCasp3による細胞除去実験を行い、これらの領域は徐波生成に寄与しない事を明らかに出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、睡眠覚醒状態、および睡眠時特異的脳波を作り出す神経回路を同定するためにジフテリアトキシン A 断片(DTA)の導入によって脳の各領域で細胞死を誘導してきた。しかし、これまでの培養細胞における報告と異なり、DTAによる細胞死誘導はin vivoでは脳領域、細胞種によって効率がばらつく事を観察した。これらの予備的データを精査し、より効率的、かつ再現的に細胞死を誘導する実験系を確立するために時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
予備的なスクリーニングの結果を精査し、より効率的で信頼性の高い実験系を確立する事が出来たため、今後はこの実験系をもちいて睡眠覚醒時間、および睡眠の深さの制御に重要な神経経路の同定を行っていく。また細胞全般の除去によって睡眠が浅くなる、すなわち徐波が減衰した脳領域については細胞種特異的Cre発現マウス系統を用いて、重要な細胞種の特定を行っていく。特定された細胞種については、光遺伝学、薬理遺伝学を用いた時期特異的活動抑制を行い、覚醒時に睡眠圧を高める事に貢献しているのか、睡眠時に睡眠時特有の徐波脳波を作る事に貢献しているのか明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本研究計画の予備的なデータとして、これまでに蓄積した脳の各部位の細胞除去スクリーニング実験があった。本スクリーニングによる予備的データについて、睡眠覚醒、脳波・解析の結果に加え脳組標本の染色・解析を行った。その結果、ジフテリアトキシンによる細胞除去効果は脳部位、細胞種によってばらつきがある事が明らかとなった。
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