2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K06442
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
冨岡 良平 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (30415244)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 淡蒼球外節 / 大脳皮質聴覚野 / 内側膝状体 / 大脳基底核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、聴覚システムにおける大脳皮質-大脳基底核ループの役割を神経回路レベルで解明する事である。教科書において、大脳基底核(線条体)は、広く大脳皮質から入力を受けている。聴覚野も線条体(尾側)に投射しているが、この線条体(尾側)がどのような神経回路を構築しているかは明らかにされていなかった。私達のグループは、最近大脳基底核が大脳皮質聴覚野に投射している事を明らかにした。これまで大脳皮質-大脳基底核ループは運動系が中心であったが、私たちのグループは、初めて感覚システムの一つである聴覚システムにおける大脳皮質-大脳基底核ループの存在を明らかにした。このループ回路は、過去の音情報を聴覚野にフィードバックしている神経回路であると考えられる。 感覚システムにおいて、「繰り返される刺激」と「稀な刺激」を弁別するのは重要な課題である。これには、過去の情報を保持し、現在の情報を評価するシステムを用意する必要がある。私達のグループは、この聴覚システムにおける大脳皮質-大脳基底核ループが、『「繰り返される音」を検出し、最終的に聴覚野で順応を引き起こし、「繰り返される音」と「稀な音」を弁別する神経回路である』という仮説に至った。本課題では、大脳皮質-大脳基底核ループの役割を明らかにすべく、①聴覚野の応答(「繰り返される音」ないしは「稀な音」に対する応答)に生じる変化を調べる。②聴覚野に投射している大脳基底核の神経細胞の応答(「繰り返される音」ないしは「稀な音」に対する応答)を調べる、という2つの目標を立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、シリコンプローブを用いてシングルユニット記録は出来ており、その研究結果を2023年2月に出版した。これは目標の①である『聴覚野の応答(「繰り返される音」ないしは「稀な音」に対する応答)に生じる変化を調べる』の結果である。主な発見は、聴覚野ニューロンは、繰り返される音に対して、応答が順応するニューロンのみではなく、促進されるニューロンもあり、私達は少なくとも4つの応答がみられる事を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
目標②の記録は深い脳部位であるが、これまでのシリコンプローブでの記録の経験があり、64チャネルでの記録システムにより、技術的な問題はないのではないかと考えている。また聴覚系の大脳皮質-大脳基底核ループの生物学的役割を解明すべく、電気生理以外の手法(破壊実験など)を考えている。
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Causes of Carryover |
前倒し申請をしたおかげで必要な物品を購入でき、国際雑誌に2報出版する事ができた。この前倒し支払請求を行ったため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(3 results)