2021 Fiscal Year Research-status Report
ポルフィリン中心の保護基としてのケイ素の利用と機能性ポルフィリンの構築への応用
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21K06463
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
林 賢 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (50584140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高波 利克 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (40241111)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポルフィリン / ケイ素 / 中心保護 / 官能基化反応 / 有機金属反応剤 / PDT |
Outline of Annual Research Achievements |
ポルフィリンは生体内でヘモグロビンとして機能するのみならず、PDT(がん治療)の治療薬としても利用されている。この治療薬においてもまだ改善点が残されており、その点を改良するために様々な官能基をもつポルフィリンの中心に望みの金属を合成終盤で導入できる方法の開発が求められる。そこで、合成化学において保護基として多用されているケイ素をポルフィリンの中心の保護に利用すれば、様々な官能基をポルフィリンに導入した後に緩和な条件で中心の脱保護ができるもの期待し、ポルフィリンの中心の保護としてケイ素を利用した官能基をもつポルフィリンの構築方法の開発に着手した。 本研究はポルフィリンの中心をケイ素で保護したポルフィリンSiPPを構築し、このSiPPと有機金属反応剤との反応性を明らかにすることで、官能基をもつ中心ケイ素保護ポルフィリンFG-SiPPの構築法を開発する。また、このFG-SiPPを利用することで、これまで合成が困難であった官能基をもつポルフィリンの構築法を開発する。さらに、これら一連のポルフィリンの潜在的な特性・機能を明らかにするために実施している。 本年度は、中心ケイ素保護ポルフィリンSiPPを構築し、得られたSiPPを臭素化したポルフィリンと有機亜鉛反応剤とのカップリング反応について検討した。その結果、中心ケイ素保護ポルフィリンを基質に用いても目的の反応は効果的に進行することに加えて、ポルフィリンの中心は亜鉛に交換されることなく、ケイ素で保護できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はポルフィリンの中心をケイ素で保護したポルフィリンSiPPとして中心にケイ素を導入したmeso-ブロモポルフィリンを構築し、その中心ケイ素ブロモポルフィリンと有機亜鉛反応剤との反応性について検討した結果、中心ケイ素ブロモポルフィリンとビスペンタフルオロフェニル亜鉛とのカップリング反応は効率良く進行し、有機亜鉛反応剤を用いて中心ケイ素ブロモポルフィリンに官能基を導入できることを明らかにした。すなわち、 Lemkeらが報告した無金属meso-四置換ポルフィリンに対してLiN(SiMe3)2及びHSiCl3を用いたポルフィリンの中心へのケイ素の導入方法を無金属meso-三置換ポルフィリンに適用することで、中心にケイ素をもつmeso-三置換ポルフィリンを合成することができた。得られた中心をケイ素で保護したポルフィリンの軸配位子をシロキシ基に交換したポルフィリンにNBSを作用させ、meso位に臭素をもつ中心ケイ素保護ポルフィリンSiPPを得ることができた。得られたSiPPと10当量のビスペンタフルオロフェニル亜鉛とPd触媒を用いたカップリング反応を行った結果、中心のケイ素は亜鉛に交換されることなく目的のペンタフルオロフェニルをもつ中心ケイ素ポルフィリンが得られた。 また、本研究に関連した研究として、ポルフィリンへのトリフルオロメチル導入反応を二つ開発し、いずれも報告した。一報は銅CF3錯体を用いたβ-シリルポルフィリンへのトリフルオロメチル導入反応であり、もう一報はNaSO2CF3とTBHPより系中で生じるCF3ラジカルを利用したNiボリルポルフィリンのトリフルオロメチル化反応である。さらに、プロトン促進型ルイス酸触媒を用いるエポキシドのアリルアルコールへの異性化反応を開発し報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はポルフィリンの中心をケイ素で保護できる可能性を見出した。しかしながら、ポルフィリン中心へのケイ素の導入は低収率に留まっており、今後の課題としてポルフィリンの中心へのケイ素の効率な導入法の開発が挙げられる。そこで、新規なケイ素導入法として従来のHSiCl3の利用ではなく新たなケイ素源を用いた方法の開発を試みる。 また、銅はポルフィリンの中心に容易に導入されてしまうため、これまでのポルフィリンの修飾反応において、銅反応剤の利用は制限されている。これに対して、最近、研究室よりポルフィリンの中心を亜鉛で保護することにより有機銅反応剤である銅CF3錯体をポルフィリンの修飾反応に利用できることを報告している。さらに、中心ケイ素保護ポルフィリンSiPPを基質に用いれば、より反応性の良い有機銅反応剤であってもポルフィリンの官能基化に利用できることが期待される。そこで、有機銅反応剤を用いた中心ケイ素保護ポルフィリンSiPPへの官能基導入反応について検討する。 さらに、得られたシリルポルフィリンSiPPの応用利用の一つに光線力学的がん治療における光増感剤としての利用がある。そこで、増感剤としての特性を評価するために、得られたシリルポルフィリンSiPPの分光学的・電気化学的測定を行う。SiPPの吸収ピークおよび酸化電位などの基礎的な物性やそれらの置換基や軸配位子の変化による挙動を解析する。
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