2023 Fiscal Year Annual Research Report
一時的配向基を用いた遷移金属触媒反応によるタンパク質ペプチド結合の化学修飾
Project/Area Number |
21K06482
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
花屋 賢悟 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (50637262)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 化学修飾 / タンパク質 / N末端アミノ酸 / トリプトファン / アルドール反応 / 銅 / ヨウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオ医薬品創薬やケミカルバイオロジーの基礎研究において、薬物や蛍光分子などの人工分子をタンパク質の特定の位置にのみ結合する反応(化学修飾反応)の開発は重要である。本研究では、タンパク質中に必ず1箇所存在するN末端アミノ酸を活用した化学修飾反応の開発を目指した。 当初、一時的配向基を用いたペプチド結合の化学修飾法の開発を計画した。生理活性ペプチドを用い、反応条件を種々検討した結果、予期に反して一時的配向基として添加した芳香族アルデヒド自身がN末端アミノ酸とアルドール反応した。この反応は種々の生理活性ペプチドやタンパク質のN末端アミノ酸上で進行した。本反応を用いて、市販の抗体医薬品であるトラスツズマブのN末端アミノ酸上にトポイソメラーゼ阻害薬であるSN38を結合した抗体-薬物複合体(ADC)を調製した。このADCは、HER2を細胞膜上に過剰発現するがん細胞に特異的に結合し、元のトラスツズマブを上回る細胞毒性を示した。本研究結果は、英文査読付学術雑誌に掲載された。 2023年度は、当初の計画を遂行するために種々反応条件を検討した。ペプチド結合の化学修飾法を開発するにはいたらなかったが、その過程で、超原子価ヨウ素種を用いたトリプトファンの化学修飾法を新たに発見した。生理活性ペプチドに酸性水溶液中、ヨウ化カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾールを作用させると、トリプトファン側鎖のインドール2位にアゾールが結合した生成物が得られた。あらかじめアゾールをペプチドのN末端に結合させてから、本反応を行うと分子内で架橋されたペプチド(ステープルペプチド)が生成した。本研究結果は、英文査読付学術雑誌に掲載された。
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