2021 Fiscal Year Research-status Report
抗がん剤耐性克服へ向けた核内受容体の活性制御機構の解明
Project/Area Number |
21K06493
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小橋川 敬博 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (90455600)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森岡 弘志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (20230097)
関口 光広 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40822490)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 核内受容体 / CAR / PXR |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物の代謝・排泄に関わる酵素類やトランスポーターの発現はがん薬物療法に対する主要な耐性機構の一つである。核内受容体ファミリータンパク質の一種であるPXR (pregnane x receptor)およびCAR (Constitutive Androstane Receptor)は、様々な薬物に結合することで活性化され、薬物の代謝・排泄に関わるタンパク質群の発現を誘導する。本研究では、PXRおよびCARの活性制御機構を構造生物学的観点から明らかにする。 令和3年度はCARの解析を主に進めた。CARに対して逆作動薬、作動薬を添加した状態での補助活性化因子および補助抑制因子との相互作用を等温滴定熱量測定により解析した。その結果、作動薬結合状態のCARが補助活性化因子および補助抑制因子のいずれを添加しても熱量変化を生じ、作動薬結合状態のCARが補助活性化因子および補助抑制因子の両方を結合し得ることが明らかとなった。結合親和性について見積もったところ、補助活性化因子の方が補助抑制因子よりも結合が強いことが示唆された。薬物を結合していない状態のCARに対しても同様の解析を行い、補助活性化因子結合の際には熱量変化が観測されたが、補助抑制因子の添加では観測されなかった。逆作動薬結合状態では補助活性化因子および補助抑制因子のいずれについても熱量変化は観測されなかった。熱量変化はCARと補助活性化因子および補助抑制因子との結合反応を反応熱という間接的な情報として検出している。結合を直接的に観測する手法を用いてCARと補助活性化因子および補助抑制因子との相互作用を解析する必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた蛍光スペクトルや等温滴定熱量測定による相互作用解析だけでは精度、検出感度の点で不十分であることが明らかとなり、分子間相互作用を直接観測する手法を新たに構築することが必要となったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
蛍光スペクトルを用いることで作動薬結合状態、逆作動薬結合状態、薬物非結合状態のCARと補助活性化因子および補助抑制因子との相互作用の解析を試みたが、CARにはTrpが含まれないため蛍光強度が小さく、精度が高いデータの取得が容易ではなかった。等温滴定熱量測定により反応熱を観測することによる相互作用解析を試みたが、系の組み合わせによっては結合しても反応熱を生じないこともあるため、反応熱という間接的な情報ではなく、結合反応を直接観測する手法の構築を進める。並行して、作動薬結合状態、逆作動薬結合状態、薬物非結合状態のCARについて分子動力学法による解析を進める。令和3年度までに複数のソフトウエアおよび力場で計算を行い、一般的な分子動力学計算法では機能との相関を明らかにする動きは観測されていない。そこで、多様な構造状態の観測に適した分子動力学計算法を採用し、解析を進める。
|
Causes of Carryover |
コロナにより、ほぼ全ての学会がオンラインとなったため旅費を支出しなかったため。
|