2023 Fiscal Year Research-status Report
結晶構造に基づいたβ-ラクタム剤分解酵素メタロ-β-ラクタマーゼ阻害剤の分子設計
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21K06500
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
黒崎 博雅 金城学院大学, 薬学部, 教授 (70234599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 紘一 湘南医療大学, 薬学部医療薬学科, 講師 (80814821)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細菌感染症 / 抗生物質 / ラクタマーゼ / 亜鉛酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
耐性を獲得した病原菌が院内感染の要因ともなり大きな社会的問題となっている。その原因の1つにメタロ-β-ラクタマーゼの産生が挙げられる。これは、新しいβ-ラクタム加水分解機構をもつので既存のβ-ラクタマーゼ阻害剤には無効であり、カルバペネムを含むほとんど全てのβ-ラクタム剤を不活化する。そのため、メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌を初期段階で判別することは化学療法において極めて重要である。本年度は、2021年度にセファロスポリン中間体とメタロ-β-ラクタマーゼの阻害剤であるN-[2-(5-dimethylamino-naphthalene-1-sulfonylamino)butyl]-3-mercaptopropionamideを結合させた化合物(以下、GCLE-DansylC4SHと略す)の大量合成を分子設計し合成した。本年度は、GCLE-DansylC4SHの大量合成を行い、IMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼに対する阻害効果並びにIMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼとKPC-3型セリン-β-ラクタマーゼに対する蛍光特性を詳細に検討した。以下に本研究で得られた知見を要約する。 (1)GCLE-DansylC4SHのIMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼに対する50%阻害濃度(IC50)は0.6μMであった。(2)1μMのGCLE-DansylC4SHにKPC-3型セリン-β-ラクタマーゼを10μMまで段階的に添加すると蛍光相対強度の増加は観測されなかった。一方、同一条件下でIMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼで行ったところ反応初期から蛍光相対強度が増加し、それに伴って時間と共に極大吸収が540nmから徐々に短波長側にシフトした。最終的には蛍光相対強度は増大して530nmに極大をもつ蛍光スペクトルに変化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでにGCLE-DansylC4SHの合成法は確立しており、スムーズに大量に合成することができた。IMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼとKPC-3型セリン-β-ラクタマーゼの酵素の培養と精製についても予定していたよりも短期間で調製できたので、阻害実験や蛍光分光法での検討が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度ではGCLE-DansylC4SHのIMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼの阻害効果並びにIMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼとKPC-3型セリン-β-ラクタマーゼに対する蛍光特性について酵素レベルで検討を行った。今後は、メタロ-β-ラクタマーゼやセリン-β-ラクタマーゼ産生菌についてGCLE-DansylC4SHの阻害能や蛍光特性を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
化合物の合成や酵素の培養と調製が予定していた期間よりの短縮できたことにより、試薬の購入が抑えられたことが主な理由である。
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