2022 Fiscal Year Research-status Report
定量の正確性を担保したターゲットリピドミクス解析法の開発とその臨床的応用
Project/Area Number |
21K06507
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
巴山 忠 福岡大学, 薬学部, 教授 (90549693)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジアシルグリセロール / 液体クロマトグラフィー/質量分析計 / フルオラスケミストリー / リン脂質 / マトリックス効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「フルオラスケミストリー」の概念を取り入れた選択的リン脂質抽出法の開発を目的としている。本抽出法を用いることで、例えば血液試料からリン脂質のみを除去することでき、分析対象であるジアシルグリセロール類を、リン脂質によるマトリックス効果を受けることなく、正確にLC-MS装置にて測定できることが可能となる。前年度までに、フルオラス抽出法の基礎的検討を行い、フルオラス溶媒であるパーフルオロアルカン類ならびにリン脂質抽出のための媒体として利用するパーフルオロポリエーテルカルボン酸の選定、ならびに用いる金属類のスクリーニングを行った。さらに市販血液試料を用い、本法のリン脂質除去能ならびにマトリックス効果改善に対する有用性を評価した。これらの結果を踏まえて本年度は、本法の有用性をさらに検証すべく、先ずは内因性ジアシルグリセロールの影響を避ける目的で、安定同位体標識化アシルグリセロールを用いた検証を詳細に行った。試料としては、市販のヒト血清及び血漿への添加サンプルを用いた。真度や再現性、さらにマトリックス効果などを含めた詳細なバリデーションを実施した結果、いずれも満足のいく結果を得ることができた。さらに、健常人より採取した血液試料を用いた検証も行った。本法により抽出の前後での定量結果を確認したところ、抽出前では明らかにマトリックス効果による測定の妨害(ピーク強度の減少や再現性の低下など)を受けていること見られたが、本抽出法を採用することで、それら妨害を受けることなく、内因性ジアシルグリセロールの測定が可能であり、定量の正確性や再現性が大幅に改善できることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要のとおり、本年度は、本研究にて開発した方法の実試料への有用性を確認すべく、血液試料を用いて詳細なバリデーションの実施を中心に行った。その結果、市販血液試料のみならず、健常人より得られた血液試料に対しても有用であることが示され、当初目的のとおり、実験は概ね良好に進捗しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,先ずは必要に応じてさらに詳細な条件設定を行っていくこととする。その後、さらに本法の有用性ならびに実用性を検証すべく、共同研究先より得られた実臨床試料に対して本法を適用し、正確な測定結果から得られるリピドミクス解析を実施する予定である。その実験の過程で、条件の修正などが必要にあるようであったら、適宜行い、本法の堅牢性を高めていくこととする。
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Causes of Carryover |
本年度は,前年度に引き続き,本研究の基礎的検討ならびに構築した方法の有用性を検証すべく、バリデーション関連の実験を中心に行っていた。そのため,使用する試薬類や消耗品の使途も限られたものであり,またコロナ禍の余波の影響もやはりあり,学会への現地参加などについても限られていたため,次年度使用額が生じてしまった。次年度は,最終年度として,実臨床試料へと適用するなどし,本法の有用性や実現可能性についてより詳細な検討を行っていく予定である。また,研究成果は積極的に学会や論文等の場で発表を行っていくこととする。
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