2021 Fiscal Year Research-status Report
ホスト-ゲストを利用した二重鎖核酸のX線結晶構造解析
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21K06511
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青山 浩 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (60291910)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / 人工核酸 / 核酸医薬 / DNAナノテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
疾患の原因となる遺伝子に作用する核酸医薬を開発するためには、生体内で分解されやすい天然の核酸では効果を発揮するには不十分であるため、修飾を施した安定な人工核酸の開発が求められる。そのような新しい人工核酸が二重鎖構造を形成したときの立体構造が明らかになれば、安定化機構を理解することが可能となるだけでなく、新たに有用な分子を設計する指針となる。しかし、このような二重鎖核酸の構造に基づいた生物学、薬学研究は立ち遅れているのが現状である。そこで、本年度はアミド結合を有する糖部架橋型人工核酸とグアニジノ基を有する糖部架橋型人工核酸の2種類のX線結晶構造解析に成功した。比較のため、同じ塩基配列の天然核酸の結晶を作成したところ、糖部架橋型人工核酸とは結晶系が異なり、分子置換法では構造決定には至らなかった。これらの結果は、糖部を固定した人工核酸を一塩基導入するだけで二重鎖核酸の構造の安定性に大きく寄与していることを示唆していた。 一方、金属の特性をDNAに付与することができれば、新しいDNAナノデバイスの創製の可能性が広がる。メチレン基で核酸糖部を架橋した人工核酸を導入した二重鎖核酸では、銀イオン存在下で中央部が折れ曲がった構造を形成するが、このユニークな構造形成における人工核酸の意義を検証するために天然核酸で結晶を作成し、X線回折実験を行ったが、こちらも結晶系異なり、双晶と思われるX線回折を示したため構造を決定できなかった。この結果も、人工核酸の二重鎖構造の安定化への寄与を示していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA 10-mer 5’-d(GCGTA[T]ACGC)-3’の6位チミン[T]に新規糖部架橋型人工核酸(アミド結合を有するAmNA、グアニジノ基を有するGuNA)の結晶化を行い、どちらも直方晶系の結晶を得た。AmNAはSPring-8のBL44XUビームラインに於いてX線回折データを収集し、1.0 Å分解能のX線結晶構造解析に成功した。GuNAは、実験室のX線回折装置で回折データを収集し、2.0 Å分解能のX線結晶構造解析を得た。そこで、AmNAやGuNAの導入が二重鎖構造に与えた影響を精査するため6位に天然のチミンを導入した二重鎖核酸の結晶化を行ったところ六方晶系の結晶を得た。SPring-8でX線回折データを1.8 Å分解能まで収集したが、分子置換法で位相を決定することができなかった。 一方、金属の特性をDNAに付与することができれば、新しいDNAナノテクノロジーが可能となる。DNA 11-mer 5’-d(CGCBrGACLTCGCG)-3’ (CBr: 5-bromo-2’-deoxycytidine, CL: 2’,4’-BNA/LNA with 5-methylcytosine (mC))に銀イオンを添加すると、大きく曲がった二重鎖構造を形成することがわかった。このユニークな構造形成への糖部架橋型人工核酸(2’,4’-BNA/LNA)の必要性を検証するために、天然の11-mer 5’-d(CGCGACTCGCG)-3’に銀イオンを添加し結晶化を行ったところ直方晶系の結晶が得られた。SPring-8でX線回折データを1.8 Å分解能まで収集したが、双晶のため分子置換法で解析ができなかった。また銀イオンの効果を検証するために、天然の11merに銀イオンを添付しなかった結晶を作成しX線回折実験を行ったが、繊維回折を示しており解析はできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA 10-mer 5’-d(GCGTA[T]ACGC)-3’の6位にチミンに天然のチミンを導入したところ分子置換法で位相が決定できなかったため、6位に臭化ウリジンを導入した二重鎖核酸の結晶を作成し、臭素の異常分散効果を利用して位相を求め構造を明らかにする。これにより、新規糖部架橋型人工核酸の二重鎖構造への影響を精査するための基盤となる構造情報を獲得する。またテトラゾール基を有する新規糖部架橋型人工核酸(TeNA)の二重鎖構造をX線結晶解析により明らかにする。 DNA 11-mer 5’-d(CGCBrGACLTCGCG)-3’ (CBr: 5-bromo-2’-deoxycytidine)に銀イオンを添加してそのX線結晶構造解析を行い、銀イオンで折れ曲がった二重鎖構造への2’,4’-BNA/LNAの必要性を検証する。 二重鎖人工核酸のX線結晶構造解析の適用範囲を大きく拡大させる手法の開発を行う。二重鎖核酸の結晶化を容易にする因子としてDNA結合タンパク質を利用し、核酸とタンパク質の複合体を調製する。結晶を形成する分子間相互作用をタンパク質のみとすることで、核酸の配列や構造に依存しない結晶化法を開発し、人工核酸のX線結晶構造を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2種類の糖部架橋型人工核酸の結晶は初期スクリーニングで作成でき、位相決定も分子置換法で成功したため当初計画より少額で可能となった。一方で、比較のための天然核酸の構造決定には合成費用が高額な臭素を導入した核酸が必要であり、次年度に使用するに至った。
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