2021 Fiscal Year Research-status Report
Smad2とSmad cofactorの相互作用によるがん悪性化抑制機構の解明
Project/Area Number |
21K06527
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
伊藤 友香 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (40454326)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | Smad2 / TGF-β / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
TGF-β(transforming growth factor-β)は、細胞増殖やアポトーシス、免疫応答など多様な細胞応答を制御する。TGF-βが細胞表面に存在する受容体に結合すると、Smad2あるいはSmad3がリン酸化され、Smad4とともにSmad複合体を形成する。Smad複合体は転写因子として機能し、TGF-β標的遺伝子の発現を制御する。TGF-βシグナルは進行したがんにおいて細胞運動性・浸潤性、上皮間葉転換の誘導、抗がん剤耐性などのがん悪性化形質を促進する一方、正常上皮細胞に対しては細胞増殖を強力に抑制するなど細胞がん化に対して抑制的に作用することも報告されている。このがんに対するTGF-βの二面性は、Smad2とSmad3の機能の相違によって惹起される可能性が指摘されているが、十分に解明されていない。申請者はこれまでに、Smad2による転写を増強する新たなタンパク質を見出した。本研究では、この分子によるSmad2依存的な転写活性化とTGF-βを介したがん悪性化抑制作用のメカニズムを明らかにする。 今年度は、各種がん細胞株にこの分子を外来性に発現させてTGF-β依存的な転写活性化を検討した。TGF-β応答能を示す複数の細胞株において、この分子がSmad2による転写活性化を増強することが示された。一方、これまでに報告されているSmad以外の転写因子とSmadによる協調的な転写活性化には影響しなかった。また、この分子をCRISPR-Cas9D10Aによりノックアウトした細胞株の樹立を開始した。今後、このノックアウト細胞株を用いて、TGF-βによるがん細胞の浸潤や運動性、上皮間葉転換のマーカー遺伝子の発現、細胞増殖の変化を検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規Smad cofactor候補分子によるTGF-βシグナル増強作用が様々な癌細胞株において認められることが明らかになった。また、細胞応答の解析に必要なノックアウト細胞株の樹立を開始することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請者ら見出したタンパク質によるSmad2依存的な転写活性化に関与するSmad2の領域を同定するため、Smad2/Smad3キメラタンパク質を発現するコンストラクトを作製し、この分子による転写活性化に必要なSmad2の領域を明らかにする。また、樹立したノックアウト細胞株を用いて、TGF-βによるがん細胞の浸潤や運動性、上皮間葉転換のマーカー遺伝子の発現、細胞増殖の変化を親株と比較する。
|
Causes of Carryover |
海外における研究滞在に伴い、当該研究にかかる消耗品費および人件費・謝金の使用が抑えられたため。今年度帰国予定であることから、今年度の消耗品費および人件費・謝金として計上する。
|