2022 Fiscal Year Research-status Report
膵管がんにおける一次繊毛消失の分子機構と影響の解明
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21K06528
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小林 哲夫 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80433994)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 一次繊毛 / 膵管がん / KIF24 / CEP164 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究において正常細胞の一次繊毛形成を抑える分子として同定したキネシンKIF24のヒト膵管癌由来Panc1細胞における機能を解析した。ゲノム編集技術を用いてPanc1細胞のKIF24に変異を導入したところ、一次繊毛形成が促進されたことから、KIF24は膵管癌細胞においても一次繊毛形成を抑えることが示唆された。また、KIF24変異Panc1細胞はin vitro及びin vivoで細胞増殖が亢進することがわかった。この結果は、一次繊毛が細胞増殖を抑えるという以前の報告と矛盾することから、KIF24変異細胞の細胞増殖亢進のメカニズムを調べた。その結果、多くの癌細胞で引き起こされている中心体の異常増加による紡錘体形成異常が、KIF24変異細胞では中心体がクラスタリングするため、抑制されることがわかった。実際にKIF24変異細胞では、細胞分裂の時間が短縮し、分裂が途中で止まる細胞も減ることが観察された。これらの結果から、膵管癌細胞においてKIF24は間期における一次繊毛形成抑制に加えて、分裂期において中心体クラスタリングに関与することが示唆された。 また、新たに一次繊毛形成制御に介在する分子として、新規低分子量GTP結合タンパク質RABL3を同定した。RABL3は、先に一次繊毛形成に必要であることが報告されていた低分子量GTP結合タンパク質RAB11とグアニンヌクレオチド型に依存して直接結合することがわかった。さらに、RABL3はRAB11と同様に一次繊毛形成初期の繊毛小胞形成に必要であることが示された。これらの結果から、RABL3-RAB11複合体による新しい一次繊毛形成制御機構が提示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵管癌細胞において、一次繊毛形成制御タンパク質KIF24の新たな役割が解明されたため。また、新規の一次繊毛形成制御因子RABL3を同定したため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度までに報告したCEP164、2022年度に報告したKIF24, RABL3についてさらに解析する。特に、CEP164による新たなヘッジホッグシグナル制御の分子機構の解明を目指す。また、他の癌腫や癌微小環境の細胞における一次繊毛の役割についても解析をすすめる。
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Causes of Carryover |
研究代表者が2022年度中に研究機関を異動し、それに伴い研究遂行を中断した期間があるため。 2023年度は、当初の計画より物品費として抗体や実験動物により多くの予算を投入し、本研究のさらなる進展を目指す。
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Research Products
(5 results)