2021 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア脂質代謝異常に起因する転写活性制御機構の解明
Project/Area Number |
21K06542
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
高須賀 俊輔 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (90375262)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
カルジオリピン(CL)の生合成反応(図1)を触媒する酵素の中で、最も遅れて遺伝子が同定されたのがPGP phosphataseである(酵母GEP4は2010年、マウスPtpmt1は2011年)。申請者らは、独自に肝特異的Ptpmt1遺伝子欠損(LKO)マウスを作製することで、複数の基質のうちホスファチジルグリセロールリン酸(PGP)こそがPtpmt1の生理的な基質であること、Ptpmt1の欠損によりPGPの代謝が阻害されることで、肝臓からのIGF-1分泌が大きく低下し、ヒトの常染色体劣勢遺伝疾患であるラロン型低身長症に類似した成長障害が引き起こされることを見出した。これはPtpmt1の生理機能をマウスの個体レベルで初めて示したものである。Ptpmt1の欠損による肝臓からのIGF-1分泌低下の分子機構を明らかにする目的で、LKOマウスと対照マウスの遺伝子発現レベルをRNA-seqにより網羅的に解析した。その結果、IGF-1のmRNAレベルでの発現低下に加えて、Igf1遺伝子の発現を制御する成長ホルモン受容体(Ghr)の発現低下が確認された。 令和2年度には、本ノックアウトマウスにおけるエピジェネティック変化を同定する目的で、クロマチンアクセシリビティの制御をATAC-seqにより解析した。新生仔肝(対照・LKO)、成体肝(対照・LKO)よりゲノムDNAを調製し、ATAC-seqによるクロマチンアクセスビリティ解析を行った。その結果、対照の新生仔肝と成体肝の違いは予想していたものであったが、予想に反して、対照・LKO肝の間で大きな差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ATAC-seqの結果から、対照とLKO肝の間で、クロマチンアクセシリビティの変化は見出されなかった。そこで、当初予定していたエピジェネティックマークの違いの解析は中断した。次に、成体肝におけるPtpmt1遺伝子欠損の誘導を行うため、Ptpmt1 floxマウスとCreERT2をユビキタスに発現するトランスジェニックマウスを交配して、タモキシフェン誘導型の全身性Ptpmt1遺伝子欠損マウスを用いた解析を行った。その結果、タモキシフェンによる遺伝子欠損誘導により、全身性Ptpmt1遺伝子欠損マウスの全例が1週間以内に死亡するという結果となり、肝臓について、より詳細な解析を行うことは出来なかった。加えて、RNA-seqのデータを再解析し、特に転写因子に着目した解析を実施した。その結果、LKO肝における遺伝子発現変化において、支配的な役割を担う転写因子が存在することが示唆された。現在、この転写因子と、PGPの結合を評価する実験系を立ち上げている段階である。 当初の計画とは異なる部分もあるが、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の結果から、LKO肝での変化は、当初予測していたエピジェネティックな変化よりも、むしろ、特定の転写因子の機能低下による可能性が示唆された。令和3年度は、当該転写因子と、PGPの相互作用に着目した解析を中心に行う予定である。また、新たにPtpmt1と同じく、カルジオリピン合成経路の生合成経路を触媒する酵素であるPgs1の欠損肝を用いて、RNA-seqを行い、Ptpmt1欠損肝の結果と比較することで、PGPの蓄積に起因する現象の詳細を解析する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス関連で出勤停止になった日があったため、研究(実験)が計画通りに実施できなかったため。
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