2022 Fiscal Year Research-status Report
環境中からのレアメタル回収技術を指向した微生物由来金属輸送体の機能解析
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21K06548
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
大城 有香 北里大学, 薬学部, 助教 (60550035)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水銀耐性遺伝子 / 水銀トランスポーター / Mer輸送体 / レアメタル輸送活性 / 多重発現株 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物由来の水銀トランスポーターとして見出されたMer輸送体(MerC、MerE、MerF、MerT)が、無機水銀やカドミウムなどの有害金属や、金、クロム、アンチモンなどの貴金属やレアメタルの取り込み活性を有することを研究代表者は明らかにしてきた。また、これらのMer輸送体を植物に導入し、金属汚染土壌の浄化に用いることができることを見出していた。本課題では、Mer輸送体を複数組み合わせた際に金属取り込み効果が向上するか検証するため、令和3年度にはMer輸送体二重発現株を作製したところ、Mer輸送体を組合せることにより無機水銀取り込み活性が向上する知見が得られ、Mer二重発現株におけるmer遺伝子の発現をmRNAレベルで確認できた。令和4年度では新たに抗体を作製し、Mer二重発現株におけるmer遺伝子の発現をタンパク質レベルで調べたところ、全ての株において目的のMerタンパク質の発現が確認された。これらの結果から、作製した二重発現株において、目的の通り各Mer輸送体が共発現していると考えられた。さらに令和4年度ではMerC+MerE株, MerC+MerF株, MerC+MerT株の有機水銀やクロム取り込み活性をMerC単独発現株と比較した。その結果、有機水銀の輸送では相乗効果が見られなかったものの、クロム輸送活性ではMerC+MerE株のクロム取り込み量がMerC単独発現株に比べ有意に高かった。一方、MerC+MerF株及びMerC+MerT株はMerC単独発現株とほぼ同等であった。この結果から、MerCのクロム輸送能はMerEを共発現させることで相加的に向上することが 明らかとなった。このことから、MerCにMerEを共発現させたトランスジェニック植物を用いる事で、クロム汚染土壌の浄化効率を向上させると期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、Mer輸送体を組合せた際の金属輸送活性についていくつかの金属で相乗効果が期待できる知見が得られてきた。また、タンパク質レベルでのMer輸送体の発現も確認している。現状では、前述の組み合わせに加え、MerT+MerF、MerT+MerE、MerF+MerE株における評価を進めている。また、金属複合ばく露時のMer輸送体の金属選択性についての検証も進めており、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
Mer輸送体の基質であるカドミウムや銅、金、アンチモンについてはまだ検討できていないため、今後検証していく予定である。また、二重発現株でも一定の効果がみられたため、三重発現株や四重発現株を作製し、効果を順次検証していく。各種金属の結果をもとにどのMer輸送体の組み合わせが効果が高いのか評価し、植物で評価するMer輸送体の組み合わせを決定する予定である。
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Causes of Carryover |
順調に実験が遂行できており、試薬や消耗品の選定により経費削減できたため。次年度に繰り越した費用で本課題の研究をさらに推進していく予定である。試薬類(培地、酵素、抗生物質、金属標準液をはじめとした生化学実験試薬類)、消耗品(ガラス器具、シャーレ、チップなど)を中心に購入する予定である。また、英語論文校閲・投稿の費用として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)