2022 Fiscal Year Research-status Report
化学物質曝露に伴う膀胱疾患の発症進展におけるプロスタグランジン合成酵素の機能解析
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21K06549
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
佐々木 由香 昭和大学, 薬学部, 講師 (40635108)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 化学発がん / 膀胱がん / プロスタサイクリン / プロスタグランジン |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度はN-butyl-N-(4-hydroxybutyl)-nitrosamine (BBN)による膀胱化学発がんにおけるPGISおよびmPGES-1の役割について解析を行った。2021年度に既にPGIS欠損マウスでは野生型マウスと比較して膀胱化学発がんが促進されていることを見出していたので、2022年度は組織中PG量や発がんに関わるmRNA発現の解析を行った。PGIS欠損マウスの膀胱組織ではPGI2代謝物である6-ketoPGF1αは検出されず、その他のPG産生の増加傾向が認められた。また、炎症性サイトカイン、ケモカインのmRNA発現がBBN投与群においてコントロール群と比較して増加し、PGIS欠損マウスのBBN投与群では野生型マウスと比較してさらに増加していた。次に、PGISの欠損が膀胱発がんを促進する機構について明らかにするために、発がん初期に注目し、検討を行った。野生型マウスにBBNを投与し、1,2,8,10週間後に膀胱を摘出し、組織標本を作製、観察したところ2週目をピークとして組織の炎症に伴う肥厚が認められた。このときの膀胱重量を測定したところ、PGIS欠損マウスではBBN投与から1、2週後の膀胱重量の増加が野生型マウスと比較して顕著に抑制された。このときのmRNA発現を解析すると、PGIS欠損マウスではBBN投与によって発現が増加した炎症性サイトカイン、ケモカインの発現が野生型マウスと比較して抑制されていた。膀胱がんは免疫応答の活性化が発がん抑制に関わることが報告されている。PGIS欠損マウスではBBNによる初期の炎症が抑制されることで発がんが促進された可能性が考えられた。 一方、mPGES-1欠損マウスでは野生型マウスと比較して膀胱発がんが抑制される傾向を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はPGIS欠損マウスでは化学発がん物質による膀胱発がんが促進されることを明らかとし、このときの膀胱組織中PG産生およびmRNA発現について検討した。さらに、BBN投与による急性炎症がPGIS欠損マウスでは抑制されることを明らかとし、免疫応答が発がんと密接な関係があると考えられている膀胱がんにおいてPGISが免疫応答の調節を介して発がんに関係している可能性を見出した。一方、mPGES-1欠損マウスでは野生型マウスと比較して発がんが抑制される傾向が認められた。これらの研究の進捗状況はほぼ、当初の計画どおりであり、実験計画は概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度はPGIS欠損マウスにおいて膀胱発がんが促進された原因として白血球に発現するPGISが関与しているのか明らかにするために、PGIS欠損マウスの骨髄細胞を野生型マウスに移植した骨髄細胞のみPGISを欠損しているキメラマウスを作製し、BBNによる膀胱化学発がんに影響するか解析を行う。また、mPGES-1の膀胱発がんへの役割についてさらに解析を進めるため、再現性の検討、膀胱組織中PG量の測定、発がんに関わる遺伝子発現の検討を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で学会がオンライン開催となったため、旅費の使用が少なかったために、次年度使用額が生じた。2023年度は学会の現地開催が見込まれるため、研究成果発表のための学会出張旅費として使用する予定である。
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