2021 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病発症におけるLRRK2異常活性化メカニズムとその病的意義の解明
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21K06558
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
伊藤 弦太 帝京大学, 薬学部, 講師 (10431892)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / LRRK2 / Rab29 / Rab12 / リン酸化 / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、家族性パーキンソン病(PD)原因遺伝子leucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)の活性化機構とその病的意義および神経変性メカニズムの解明を行うものである。2021年度はまず、LRRK2を活性化することが知られているRab29について、その生化学的性状解析を行った。培養細胞や動物組織を生化学的に分画すると、Rab29は他のRabと異なり膜画分に存在していた。また、Triton X-114を用いた相分離によりRab29の疎水性を検討したところ、他のRabと同様に疎水性を有していた。これらの結果から、Rab29は他のRabと同様にゲラニルゲラニル化という脂質修飾を受けるが、GDP解離阻害因子(GDI)による膜からの引き抜きを受けない特異な性質を有することが示された。また、LRRK2の活性化により起きる細胞内現象についても解析を行った。LRRK2が細胞内小胞輸送のスイッチとして働くRabタンパク質をリン酸化することから、種々のオルガネラの細胞内局在への影響を検討した。培養細胞に家族性変異型LRRK2を過剰発現すると、リソソームが核近傍に集積することを見出した。これについて、定量法を2種類開発し、いずれによって統計学的に有意な集積が示された。CRISPR-Cas9法によりLRRK2基質タンパク質をノックアウトしたところ、Rab12のノックアウトによりリソソームの集積が消失した。ノックアウト細胞に野生型Rab12を再発現することでリソソーム集積が回復したが、LRRK2によるリン酸化部位を持たないS106A変異型Rab12では回復しなかった。これらの結果から、Rab12の過剰リン酸化によりリソソーム局在が異常になる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では2021~2023年度の補助期間において、Rab29によるLRRK2活性化メカニズムの解明、LRRK2異常活性化によるリソソーム局在変化のメカニズムの解明、リソソーム局在異常と神経変性の関連などについて研究を進める予定だった。2021年度において、Rab29の生化学的性状解析を行い、Rab29が他のRabタンパク質とは異なる特異な性質を有することが明らかになり、(1)について十分な進捗があったといえる。また、(3)LRRK2異常活性化によるリソソーム局在変化のメカニズムの解明についても、LRRK2の基質タンパク質のうち、Rab8やRab10ではなくRab12がリソソーム局在変化に関与することを見出した。Rab12のリン酸化の機能的意義についてこれまでに知られていることはなく、非常に大きな進展があったと考えている。さらに、Rab12のエフェクタータンパク質のノックアウトによってもリソソームの核近傍への集積が消失することを示唆するデータが得られつつある。リソソームの細胞内局在制御の分子メカニズムは近年注目を集めており、新規メカニズムとしてLRRK2-Rab12経路を同定し、その詳細を明らかにしつつある点でも大きなインパクトが期待できる。(3)(4)と関連して、リソソーム内容物やエクソソームの細胞外分泌の解析を開始し、リソソームストレスを起こした場合に、リソソーム内容物やエクソソームがLRRK2活性依存的に細胞外に分泌されることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
LRRK2活性化メカニズムの解明に関してはまず、これまでに明らかにしたRab29の特異な生化学的性状と機能の関連を明らかにする。第一に、Rab29の特異な生化学的性状についてさらに解析を進める。第二に、BioID法により同定したRab29近傍タンパク質には小胞体(ER)やゴルジ体タンパク質が主に含まれていたことから、Rab29がER-ゴルジ体の表面に存在し、その膜輸送を制御する可能性を考える。ER-ゴルジ体を経由して細胞膜やその他のオルガネラへの輸送を細胞生物学的手法により可視化し、Rab29のノックアウト細胞において変化が生じるか解析する。LRRK2活性化によるリソソーム局在変化については、その分子メカニズムをさらに詳細に明らかにし、リソソームの細胞内局在制御機構のひとつとして確立する。また、リソソームの局在異常が神経変性を起こす機構について、局在異常によるリソソームやエクソソームの分泌異常を考える。培養細胞において培養上清に分泌されるタンパク質の変化や、その分泌因子の神経細胞毒性について研究を進めることで、LRRK2が神経変性を起こすメカニズムを明らかにする。
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Research Products
(9 results)