2023 Fiscal Year Annual Research Report
プロスタグランジン受容体による微小環境調節を介した新規生理病態制御機構の解明
Project/Area Number |
21K06561
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
稲住 知明 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (80746503)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロスタグランジン / 受容体 / コラーゲン / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロスタグランジン(PG)は生体膜リン脂質からホスホリパーゼA2によって切り出されたアラキドン酸をもとに、シクロオキシゲナーゼを律速酵素として産生される代表的な生理活性脂質であり、発熱、疼痛、炎症を代表とする様々な生理、病態作用を担う。申請者はこれまでに、PG受容体欠損マウスを用いた解析により、生体内で一部のPG受容体が、脂肪組織、骨格筋をはじめとする多くの組織において、特定のコラーゲン分子種の産生調節に寄与する可能性を見出した。本コラーゲン分子は最近、組織線維化やがんの進行、筋再生などに重要な役割を果たすことが報告されていることから、本研究では、PG受容体がコラーゲンなどにより形成される細胞外微小環境の制御を介して、こうした病態生理過程を調節する可能性を検証することを目的とした。これまでの研究期間において、様々な培養細胞系を用いてPG受容体が本コラーゲン産生を亢進させる条件を探索したところ、筋前駆細胞や線維芽細胞の高密度培養条件において顕著な効果を示すことを見出し、圧負荷刺激によりその恒常性が制御される骨格筋にフォーカスして解析を始めた。マウスの後肢固定による筋萎縮、筋回復モデルを用いて解析を行ったところ、一部のPG受容体欠損マウスでは、筋回復が遅延する傾向が認められ、本受容体が骨格筋の恒常性維持に関与する可能性が示唆された。最終年度においては、骨格筋組織における本受容体の標的細胞を同定するため、組織中の細胞種ごとの受容体発現プロファイルを解析したところ、本受容体は、筋細胞にはほとんど発現せず、間葉系幹細胞や毛細血管の内皮細胞に高発現することが判明した。以上より、本受容体は骨格筋において、筋細胞周囲の微小環境や血管リモデリングの調節を介して筋恒常性の維持に寄与する可能性が示唆された。
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