2023 Fiscal Year Research-status Report
乳がん治療抵抗性における亜鉛トランスポーターの分子機構解明と制御戦略
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21K06567
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
中瀬 朋夏 (高谷朋夏) 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (40434807)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 乳がん / 亜鉛 / タモキシフェン / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がん患者の約80%を占めるエストロゲン受容体(ER)陽性乳がんは、抗エストロゲン剤タモキシフェンをはじめとするホルモン療法が選択され、治療効果も高い。しかし、初期治療が成功しても、その40%で治療耐性を獲得し、未だ大部分が不明な乳がん悪性化機構の解明とその治療応用は強く求められている。これまで、乳がん細胞の機能制御に重要な亜鉛は、運ばれる亜鉛トランスポーターの種類によって、選択的に標的分子を制御でき、とりわけ亜鉛トランスポーターZIP7の基軸は、乳がん悪性化と生存戦略に強く関連していることを明らかにしてきた。本年度は、ZIP7を標的とした乳がんの新治療戦略の創出を目的として、乳がん細胞におけるZIP7の役割を解明し、タモキシフェン治療耐性の克服にZIP7に対する選択的阻害剤NVS-ZP7-4が有用か否か検討した。その結果、ヒトER陽性乳がん細胞MCF-7の生存には、ZIP7を介した細胞質への亜鉛供給が必要であった。タモキシフェンとZIP7阻害剤の併用は、それぞれ単独の処置よりも、劇的に細胞死を誘導した。さらに、乳がん幹細胞様細胞やタモキシフェン治療耐性細胞の生存においてもZIP7が関与し、タモキシフェンとZIP7阻害剤の併用はIC50を著しく減少させた。ZIP7阻害剤の処置はまた、タモキシフェン治療耐性細胞の休眠プロセスをも阻止できる可能性を示した。以上より、ZIP7阻害剤は、ER陽性乳がんの治療に有効であり、乳がん治療戦略の新たなアプローチとして、期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、タモキシフェンに対する治療耐性を獲得した乳がん細胞における亜鉛の役割解明とその治療応用について、細胞生物学的実験系を中心に進めた。しかし、輸入による実験試薬の購入において、在庫不足や調達が大幅に遅れる事態が幾度とあり、計画していたイメージング解析を含む一部の生化学実験および動物実験に関しては遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
タモキシフェンとZIP7阻害剤の併用投与の治療応用の可能性については、投与量およびルートといった投与計画の構築を中心に、in vivo担がんモデルを用いて、安全性を追跡し、検証する。
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Causes of Carryover |
2023年度では、輸入による実験試薬の購入において、在庫不足や調達が大幅に遅れる事態が幾度とあり、計画していた実験の一部(特に動物実験)を行うことができなかった。追加実験に関しては、次年度に実施し、未使用額はその経費に充てる。
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