2021 Fiscal Year Research-status Report
メチル水銀によるレドックス制御因子の変動を起点とした神経機能変化の素過程解明
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21K06572
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
鵜木 隆光 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 主任研究員 (00742868)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メチル水銀 / サルフェン硫黄 / レドックスホメオスタシス |
Outline of Annual Research Achievements |
メチル水銀 (MeHg) 曝露による神経系への毒性機序の探究において生体のレドックス(酸化還元)変動は不可欠の概念である。我々は高い求核性・抗酸化性を有する低分子化合物である活性イオウ分子 (Reactive sulfur species, RSS) を介したレドックス恒常性維持機構を明らかとしてきた。RSS中のサルフェン硫黄はタンパク質のシステイン残基にも易転移し当該部位をポリイオウ化することが明らかとなり、多彩な機能制御を行うことが推察されるものの、神経細胞においてMeHg曝露による当該機能変動に着目した研究は皆無である。そこで本研究はいまだ統合的理解に乏しいポリイオウ化を介したタンパク質の機能制御に焦点を当て、神経細胞における特異的分子のポリイオウ化被修飾状態の変動がもたらす機能変化をシグナル毒性と細胞機能と紐づける試みにより、MeHg毒性機序解明の新たな研究戦略開拓に挑む。 本年度はポリイオウ化タンパク質の定性・定量解析の要となるゲルシフトアッセイとプルダウンアッセイの条件検討を行った。本解析系を用い検出されるラット血漿中アルブミンのポリイオウ化は、RSSモデル化合物処理により増強された。また、RSSモデル化合物で処理したラット脳試料をMeHg等種々の親電子物質で処理すると、電気泳動度に変化を示す複数のタンパク質が検出された。これらはRSSからタンパク質のシステイン残基へと転移したサルフェン硫黄がMeHgにより奪取されることを示唆する。脳中タンパク質のポリイオウ化及びMeHg曝露による当該修飾の変動がもたらす毒性影響解析を展開していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に則り解析系の至適条件検討から始め、研究実績の概要欄に記載したように作業仮説を支持する知見を得たことから、順調に進展していると判断した。一方で、他機関への出張により高速液体クロマトグラフ質量分析計を用いて行う解析は、コロナ禍の影響もあり遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に則り脳中ポリイオウ化タンパク質の同定とMeHg曝露による当該修飾の変動を解析する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響を受け、他機関での分析実験のための出張の中止および学会発表を予定していた米国毒性学会年会への出張の中止のためである。分析実験のための出張旅費や学会参加費および旅費として使用する。
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