2021 Fiscal Year Research-status Report
新規Nr4a1小分子拮抗薬の創薬~癌も痛みも抑える新しい薬となるか?
Project/Area Number |
21K06574
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高崎 一朗 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (00397176)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Nr4a1 / 核内受容体 / 神経障害性疼痛 / 癌性疼痛 / 機械的アロディニア / in vivo イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,申請者が新規に開発したNr4a1小分子拮抗薬(以下NRA化合物)が,抗癌作用と鎮痛作用を同時に示すかを調べる目的で,癌性疼痛モデルマウスを用いた評価を行った。用いた癌性疼痛モデルマウスは,Luc遺伝子を導入したマウス骨肉腫細胞NCTC2472細胞(以下Luc-NCTC細胞)を,C3Hマウスの大腿骨に移植する骨破壊性疼痛モデルマウスである。移植後10日以降において後肢の触刺激に対する過敏応答が観察された(機械的アロディニア)。またin vivoイメージングシステムにより,当マウスの大腿骨における骨腫瘍組織の増大も観察された。 Luc-NCTC細胞の移植10日目から,一日1回NRA化合物を腹腔内投与し,疼痛反応と骨腫瘍を観察した。NRA化合物の投与により,反対足の反応性には影響を与えずに,癌細胞移植足の機械的アロディニアを有意に抑制した。またin vivoイメージングにより,骨腫瘍の増大が抑制された。以上の結果より,NRA化合物は鎮痛作用と抗癌作用を併せ持つ化合物となることが示唆された。しかしながら,その効果は限定的(完全に抑制されたわけではない)であったため,さらなるNRA化合物の開発が必要である。 次に,NRA化合物が示す抗がんメカニズムを明らかにする目的で,すい臓がん細胞株およびグリオーマ細胞株における遺伝子発現をマイクロアレイ法を用いて検討した。NRA化合物の処置により,多くの遺伝子発現の増大・減少が認められた。NRA化合物は癌細胞に対し細胞死・増殖抑制・遊走抑制を示すが,これらに関連する遺伝子の変動が多く認められ,抗癌作用メカニズムの一端が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨癌性疼痛モデルマウスを樹立し,疼痛反応とin vivoイメージングによる腫瘍形成を捉えることができた。このモデルマウスを用いて,NRA化合物の評価(鎮痛,抗癌作用)を観察することができたので,当初の研究目標は達成しており,「おおむね順調に進展している」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
モデルマウスの確立と,鎮痛・抗癌作用を併せ持つことが確認できたので,今後は,NRA化合物のin vivoにおける鎮痛・抗がんメカニズムを明らかにしていく予定である。初年度の研究でin vitroがん細胞における遺伝子発現を調べ,抗癌作用に関与すると思われる遺伝子を明らかにすることができたので,in vivoにおいてもこれらの遺伝子が同様に変動するのかを明らかにする。同時に,in vivoにおいて中枢神経組織および癌組織からRNAやタンパクを抽出し,マイクロアレイ,RT-PCRおよびWB法などにより,変動する遺伝子・タンパクを同定し,鎮痛・抗がん作用メカニズムを明らかにする。 また,培養癌細胞において,NRA化合物により発現の変動した遺伝子をCRSPR/Cas9を用いてノックアウトし,癌細胞の生存や増殖,遊走に対する効果を調べ,NRA化合物の抗癌作用メカニズムについて明らかにする。
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Causes of Carryover |
約55,000円の余剰となったが,研究費の使用率は95%を超えており,概ね当初の研究計画通りに研究費を使用できている。
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Research Products
(8 results)