2021 Fiscal Year Research-status Report
マスト細胞機能における小胞体ストレスの役割解明と新規アレルギー治療標的の探索
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21K06577
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小澤 孝一郎 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (10211822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細井 徹 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 教授 (40379889)
柳瀬 雄輝 広島大学, 医系科学研究科(薬), 准教授 (40452586)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / アレルギー / マスト細胞 / 好塩基球 |
Outline of Annual Research Achievements |
蕁麻疹、花粉症、喘息や食物アレルギーに代表される即時型(I型)アレルギーを罹患する患者は国内外で増加傾向にあり、解決すべき臨床的課題となっている。即時型アレルギーは、抗原(アレルゲン)-IgE抗体反応によりマスト細胞・好塩基球が活性化され、細胞内に貯蔵されているヒスタミン等の炎症惹起物質の放出(脱顆粒)と、それに次ぐロイコトリエン・プロスタグランジン等の脂質メディエータや、TNFα等の炎症性サイトカインの産生・放出により誘発される。これまでにマスト細胞・好塩基球からのアレルギー誘発物質の放出を阻害する薬物はいくつか実用化されているものの、その効果は限定的で、より強力にマスト細胞・好塩基球の活性化を抑制する薬物の開発が求められている。そこで本研究では、マスト細胞・好塩基球の活性化と密接な関わりがある「小胞体」の役割に着目し、小胞体ストレス負荷によるマスト細胞・好塩基球の活性化への影響と、マスト細胞活性化によって引き起こされる小胞体ストレスとその役割の両面から解析を行い、マスト細胞・好塩基球の機能に関わる小胞体ストレス関連分子を同定することで、従来の抗アレルギー薬とは異なる分子を標的とした新しいアレルギー治療薬の開発に繋げる。2021年度は、課題1: ラット好塩基性白血病細胞株(RBL-2H3)のアレルギー反応における小胞体ストレスの関係解明について主に検討した。また、同時にマウス初代培養マスト細胞(BMMC)との関りについても検討した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、主に課題1と課題2について検討した。その結果、小胞体ストレス惹起物質であるツニカマイシン(Tm)等は、RBL-2H3細胞、BMMCの脱顆粒を抑制することが示された。次に、RBL-2H3細胞を活性化させた際に、小胞体ストレスセンサであるIREI、PERK、ATF6が活性化するか検討した。その結果、抗原刺激によってRBL-2H3細胞、BMMCのどちらの細胞においても、少なくともIRE1 が活性化されXBP1(mRNA)のスプライシングが起きることが示された。これらの結果は、小胞体ストレスは脱顆粒を抑制し、また、抗原刺激による活性化もマスト細胞の小胞体ストレスを誘導することを示している。次に小胞体ストレスセンサタンパクの阻害薬がRBL-2H3細胞、BMMCの脱顆粒を抑制するか検討した。その結果、PERK阻害薬であるGSK2606464、ATF6阻害薬であるCeapin-A7は脱顆粒をほとんど抑制しないことが示された。いくつかのIRE1阻害薬も脱顆粒に影響を与えない一方で、IRE1阻害薬の一部(APY29など)はRBL-2H3細胞、BMMCの脱顆粒を抑制することが示された。そのため、マスト細胞の脱顆粒においてIRE1には何らかの役割がある可能性が示された。さらに、RBL-2H3細胞活性化におけるストレスセンサタンパク質の役割を明確にするため、CRISPR-Cas9システム(ゲノム編集技術)を利用して、IRE1をノックアウトしたRBL-2H3細胞を作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に作製したIRE1ノックアウト RBL-2H3細胞を使って、マスト細胞の脱顆粒におけるIRE1の役割についての詳細を検討する。また、脱顆粒と同様に、小胞体ストレスタンパク質(PERK、IRE1、ATF6)と脂質メディエータであるロイコトリエンや炎症性サイトカイン(TNF等)の産生・放出に対するIRE1抑制の影響をRT-PCR法とELISA法により検討する。さらに、ヒトのマスト細胞・好塩基球における小胞体ストレスタンパクの役割を明らかにするため、「課題3: ヒトマスト細胞・好塩基球機能と小胞体ストレスの関係解明による治療薬標的の探索」について検討を進める。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により出張費などが削減されたため、次年度使用額が生じた。繰り越した研究費は、現地開催が増加すると考えられる2022年に開催される学会の参加・旅費に使用する。
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