2022 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍切除後の海馬ミクログリアの異常を介したうつ様行動の発現メカニズムの解明
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21K06590
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
尾中 勇祐 摂南大学, 薬学部, 講師 (90749003)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ミクログリア / 腫瘍切除 / うつ様行動 / がん / シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、我々は、がん治療後に持続する情動障害のモデル動物である腫瘍切除マウスにおいて、長期的に持続するうつ様行動に海馬ミクログリアの機能変化が関与する可能性を示してきた。令和4年度は、腫瘍切除マウスで認められるミクログリアの機能変化のメカニズムおよび、ミクログリアの機能変化が引き起こしうる神経機能変化の詳細を明らかにすることを目的として、以下の成果を得た。 ナイーブマウスの海馬を摘出した後、パーコール密度勾配遠心法により、ミクログリア画分を分取した後、mRNAの抽出を行い、cDNAに変換した。PCRにより、各種細胞マーカー分子の発現を確認したところ、ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイトマーカーの発現は確認できず、ミクログリアが単離できていることを確認した。一方で、本画分において、5-HT1-7受容体の発現確認を行ったところ、全ての受容体の発現が確認できなかった。このことから、腫瘍切除マウスにおけるミクログリアの形態変化に、セロトニンシグナルが直接の関与を示さない可能性が考えられる。 ゴルジ染色および神経活動マーカーであるc-Fosの免疫染色により、腫瘍切除マウスの海馬において、神経細胞の樹状突起スパイン数が減少すること、および物体探索行動試験後のc-Fos陽性細胞数が減少することを見出した。以上のことから、腫瘍切除マウスでは、海馬において神経機能が変化する可能性が示唆された。 今後は、腫瘍切除マウスの海馬において、ミクログリアの機能変化を引き起こしうる、別のシグナルの関与を明らかにするとともに、神経機能変化にミクログリアの機能変化が関わるかどうかを、ミノサイクリンを使用した研究から明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度では、令和3年度において手技の確立に時間がかかったミクログリアの単離が成功し、セロトニンの受容体の発現確認を行えたものの、当初の予想とは異なり、セロトニン受容体の発現が認められなかった。そのため、ミクログリアの形態変化を引き起こしうるシグナルの特定ができていない。一方で、腫瘍切除マウスの海馬において、神経細胞の樹状突起スパイン数が減少すること、物体探索行動試験後のc-Fos陽性細胞数が減少することを見出した。これらの結果は、当初の想定通りの結果であり、順調に進んでいる。以上のことから、全体的にはやや遅れている状況であるが、ミクログリアの形態変化を引き起こしうるシグナルの候補は、既に見出しており、当初の予定通りの成果を達成することは十分に可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度で、ミクログリアにおけるセロトニン受容体の発現が確認できていないことから、異なるシグナルを探索する必要がある。そのヒントとして、令和4年度中に、がん細胞の接種により形成させた腫瘍において、顕著な酸化ストレスが発生する可能性を明らかにした。本酸化ストレスが、腫瘍切除マウスの海馬ミクログリア内においても認められるかどうかや、海馬ミクログリアの形態変化に対して与える影響を評価する。これにより、当初の目的である、腫瘍切除マウスの海馬ミクログリアの形態変化のメカニズムの解明を目指す。また、腫瘍切除マウスの海馬における神経細胞のスパイン数の減少やうつ様行動の評価試験後のc-Fos陽性細胞数の減少に対して、ミノサイクリンが与える影響を明らかにすることで、腫瘍切除マウスにおけるミクログリアの形態・機能変化と神経機能の変化の関連についても明らかにする予定である。
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Research Products
(2 results)