2021 Fiscal Year Research-status Report
炎症性反応の空間的・時間的制御による新規網膜変性疾患治療戦略の確立
Project/Area Number |
21K06605
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
坂本 謙司 帝京大学, 薬学部, 教授 (80317065)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 薬理学 / 網膜 / 神経変性疾患 / 緑内障 / 網膜色素変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
グルタミン酸興奮毒性により網膜を傷害するNMDAを硝子体内投与したマウスにおいて,網膜のパラフィン包埋切片を用いた免疫組織化学を行ったところ,ダメージ関連分子パターン(DAMP)の1つであるHMGB1は網膜のほぼ全ての細胞に,TNF-R1とTNF-R2は網膜神経節細胞と視細胞内節に,TLR9の発現はGCLに存在する細胞に局在していた. TLR9刺激薬であるODN D-SL01をあらかじめ硝子体内投与しておいた眼球にNMDAを硝子体内投与したところ,NMDAによる網膜神経節細胞死が抑制されることが明らかとなった.また,ODN D-SL01を硝子体内投与すると,ミュラー細胞においてTNF-αの発現が亢進することや,ODN D-SL01の網膜神経保護作用がTNF-αの中和抗体を同時に投与することで消失することも明らかとなった. TLR9刺激薬は,NMDA硝子体内投与により引き起こされる網膜神経節細胞のアポトーシスを投与6時間後では促進し,12および24時間後では抑制していることが明らかとなった.網膜神経節細胞死が遷延すると,傷害された細胞内からDAMPが放出され,DAMPにより引き起こされる細胞死がより長い時間に渡って起きることで,より強い網膜傷害に繋がる可能性がある.実際,DAMPの1つであるHMGB1の中和抗体をNMDAとともに投与しておくと,NMDAの神経細胞傷害作用が抑制された. 従って,あらかじめTLR9を刺激しておくと,TNF-αの発現が高まることによって,傷害に対して脆弱な神経細胞を速やかに脱落させ,網膜全体の環境を整えることによって,最終的には神経保護作用を引き起こす可能性が考えられた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り炎症性反応に関与する分子の網膜における発現部位に関する検討を行い,網膜において傷害性に働く因子のみを抑制する,あるいは保護的に働く因子のみを活性化することにより,網膜神経細胞を保護する手法を見いだす実験の一部を実施することができたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
今回明らかとなった炎症性反応に関与する分子の網膜での発現に関して,経時的な発現変動を追うことにより,網膜神経保護が期待できる薬物の最適な投与タイミングを探ることを考えたい.加えて今後は,網膜色素変性モデル動物においても,緑内障モデル動物と同様の検討を行う予定である.
|
Causes of Carryover |
発注した物品の一部の納入が翌年度となったため,2022年度においてそれらの代金の支払いに充当する.
|