2021 Fiscal Year Research-status Report
血栓止血系分子とHMGB1の相互干渉による疼痛制御のメカニズムと臨床的意義の解明
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21K06608
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 富美子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90271410)
坪田 真帆 近畿大学, 薬学部, 講師 (90510123)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 痛み / 化学療法誘発性末梢神経障害 / トロンボモジュリン / 内臓痛 / 抗凝固薬 / トロンビン / 過敏性腸症候群 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、ボルテゾミブ、パクリタキセル、オキサリプラチンなどの抗がん薬の副作用として生じる化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)、butyrateやTNBSなどにより誘発される過敏性腸症候群(IBS)モデルにおける内臓痛、2型糖尿病に伴う有痛性末梢神経障害に対して、遺伝子組換えヒト可溶性トロンボモジュリン(トロンボモジュリンアルファ;TMα)が予防的に作用することを検証あるいは証明した。一方、1型糖尿病の末梢神経障害に対してTMαは無効であった。また、抗凝固薬アルガトロバンは、上記痛みモデルにおけるTMαの効果を抑制した。また、TMαの抗CIPN効果にはトロンビン依存性のHMGB1不活性化作用に加えて、プロテインC(PC)およびthrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)の活性化が関与することを明らかにした。さらに活性化されたPC(APC)とTAFI(TAFIa)の標的分子はそれぞれproteinase-activated receptor 1 (PAR1)および補体アナフィラトキシンC5aであることも突き止めた。また、関西医科大学附属病院薬剤部との共同研究で実施した後ろ向きコホート研究により、2型糖尿病患者において有痛性末梢神経障害の発症率は、抗凝固薬投与患者の方が非投与群よりも有意に高いことを突き止め、内因性トロンビンが恐らく内皮トロンボモジュリン依存性に痛み抑制的に働いているとの仮説を支持する知見が得られた。このように、2021年度の研究により、本課題を進めるための基礎的知見が得られ、2022年度以降の実験計画を円滑に実行するための基盤を整備することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
はじめに立てた仮説どおりの結果が得られており、特に問題ないから。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究によって得られた知見に基づき、2022年度からはCIPNやIBSに伴う内臓痛の発症に関与するHMGB1を分泌するマクロファージ以外の細胞の同定、APCの抗CIPN作用に関与するPAR1の発現細胞の探索、TAFIaの標的であることを見出だしたC5aの受容体C5aRの発現細胞の探索などに取り組んでいく予定である。さらに、マクロファージ、神経細胞、グリア細胞などからのHMGB1遊離に関与する細胞シグナル、CIPNやIBSモデルの病態形成に伴うHMGB1、C5a, C5aR, PAR1などの各種組織・細胞における量的変動も調べる。また、2021年度に得られた実験結果をまとめて論文を作成し国際的な学術雑誌に投稿する予定である。
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Research Products
(11 results)