2023 Fiscal Year Annual Research Report
アストログリアのエンドセリン受容体を標的とした外傷性脳損傷(TBI)改善薬の開発
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21K06609
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
小山 豊 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (00215435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 安彦 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (60456837)
道永 昌太郎 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (60624054)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アストログリア / エンドセリン / 脳浮腫 / ETB受容体 / 神経炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
外傷性脳損傷(TBI)に対するアストログリアのエンドセリン(ET)の役割について研究し、以下の知見を得た。 ETB受容体拮抗薬による脳浮腫抑制メカニズムについて、昨年度までにETは培養アストログリアおよびマウスTBIモデルで脳浮腫惹起因子であるNa-K-Cl共輸送体(NKCC1)の発現を亢進することを明らかした。2023年度は、NKCC1発現機構を検討し、ETが培養アストログリアにおいて遺伝子転写因子である低酸素誘導因子(HIF1a)発現を増加すること、HIF1a阻害がETによるNKCC1発現を抑制することを明らかとした。またTBIモデルで、脳損傷によるHIF1a発現増加がアストログリアに由来すること、およびETB拮抗薬であるBQ788投与によりHIF1a発現が抑制されることを明らかにした。これらの結果は、TBI時のNKCC1発現増加が、ETB受容体刺激によるHIF1a活性化がNKCC1発現に関わることを示す。HIF1aはNKCC1以外にもVEGFやMMPsなどの脳浮腫惹起因子の発現に関わる。そのためBQ788はHIF1aの抑制を介して効果的な脳浮腫抑制効果を示すと考えられる。 TBIは脳内での神経炎症を惹起させ脳損傷を増悪する。2023年度はETによる炎症惹起分子の発現について、シクロオキシゲナーゼ-2(COX2)発現に対するBQ788の作用を検討した。マウスTBIモデルでは損傷後1~5日後にCOX2発現の増加が認められた。BQ788の投与はTBIによるCOX2発現を抑制した。培養アストロサイトにおいて、ET-1はCOX2発現を増加させ、その作用はBQ788で抑制された。COX2はプロスタノイド類の産生を介して種々の炎症反応を惹起する。BQ788によるCOX2発現の抑制は、TBI時の神経炎症の抑制にETB受容体の遮断が有効な方法であることを示唆する。
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