2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of new Na,K-ATPase inhibitor and the study of its reaction mechanism
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21K06611
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 邦明 北海道大学, 歯学研究院, 名誉教授 (40133748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有澤 光弘 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (40312962)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | aplysiallene / minimiflorin / Na,K-ATPase / H,K-ATPase / サブタイプ選択的阻害作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究分担者が合成した(+)-laurenidificin、(-)-aplysiallene、(±)-aplysiallene、ブロモジエン部分の幾何異性体である(-)-及び(±)-bromodiene isomerを使用して、研究代表者は、これらの物質の脳Na,K-ATPaseに対する作用を解析した。これらの結果を論文として、近く公表予定である。 H,K-ATPase阻害作用のある物質は、Na,K-ATPase活性も抑制する可能性が高く、Na,K-ATPase活性の調節に使用できる可能性がある。そこで、研究分担者は、H,K-ATPase阻害作用のある(±)-minimiflorinと、その前駆体の合成を行った。ケトンとアルデヒドから生成した物質のoxa-Michel付加反応により (±)-minimiflorin前駆体1を得た後、プレニル化した(±)-minimiflorin前駆体2を経てラセミ体である(±)-minimiflorinの全合成を達成した。しかし、合成した(±)-minimiflorinと単離論文の13CNMRのスペクトルが一部合致しなかった。そこで合成経路を変更して、再度(±)-minimiflorinを合成したところ、この13CNMRのスペクトルは先に合成した(±)-minimiflorinと一致した。さらに、合成した(±)-minimiflorinのX線構造解析を行って単離論文の13CNMRを訂正することができた。 研究代表者は、(±)-minimiflorin及び2種の前駆体のラット脳Na,K-ATPaseに対する作用を解析した。その結果、 (±)-minimiflorinと前駆体2はIC50値が約35 μMで活性を抑制したが、前駆体1はほとんど抑制しなかった。これらの結果と、(±)-minimiflorin類の合成方法を日本薬学会年会において報告した。 研究代表者は、(±)-minimiflorin類のH,K-ATPaseに対する作用を検討するために、胃粘膜を材料としてH,K-ATPaseの精製の準備を進めた。また、サブタイプの異なるNa,K-ATPaseに対するminimiflorin類の作用を検討するために、培養したNeuro-2a細胞とHEK293細胞のNa,K-ATPaseの精製を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3年の研究期間のうち1年目及び2年目はほぼ全期間新型コロナウイルス感染による研究活動の自粛の影響を受けたが、3年目はほぼ通常の研究活動を行うことが出来た。そのため、1、2年目の遅れをかなり回復することが出来たが、「概ね順調に進展している」と評価するまでには至らなかった。そのため、研究期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、2年目の研究活動の遅れはコロナウイルス感染の影響によるものであり、申請した研究計画に沿って今後の研究を行う。 すでに(-)-aplysialleneと (+)-laurenidificin誘導体によって得られた結果を論文として公表する。また、研究分担者は、初期の計画通りに、 (-)-aplysialleneと (+)-laurenidificin誘導体の合成過程を改善して大量合成法の開発を試みる。 研究計画の段階では、有望なNa,K-ATPase阻害薬として(-)-aplysialleneと (+)-laurenidificin誘導体の合成のみを計画していたが、研究分担者は新規化合物として(-)-minimiflorin、(±)-minimiflorin及び(±)-minimiflorin前駆体の合成を行った。そこで、さらにminimiflorin類縁体の化学合成を進める。研究代表者は、minimiflorin類縁体のNa,K-ATPase、H,K-ATPase及びCa-ATPase活性に対する作用を解析して、構造活性相関を明らかにする。 また、研究代表者は培養を行っているNeuro-2a細胞とHEK293細胞を使用して、研究分担者による合成物質の培養細胞に対する作用と細胞毒性を解析する。
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Causes of Carryover |
1,2年目のコロナウイルス感染による研究活動の制約と研究代表者と分担者の移動の制約が大きな要因となって、研究の進展が遅れたため、消耗品の使用額が減少した。研究代表者の場合は、高額になる細胞培養関連の消耗品の購入が減少したことが大きく影響した。また、旅行の自粛により研究打ち合わせの旅費を使用しなかったことも影響した。 3年目は、社会状況の変化もあり、普通の研究活動を行えたが、消耗品や細胞培養関連の物質は最初の2年間で購入したものを活用することができた。また、研究全体の遅れもあり、学会発表や論文公表のための経費を使用する状況には至らず、研究打ち合わせや発表のための旅費も発生しなかった。 3年目の途中から研究成果を確かなものにするために期間の延長の申請を考え、そのための経費として、未使用額をのこした。4年目の延長期間には、未使用額を活用して成果を挙げる決意である。
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