2022 Fiscal Year Research-status Report
漢方薬を活用した新規適応障害治療薬開発のための基礎研究
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21K06620
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宮岸 寛子 日本大学, 薬学部, 講師 (30642417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小菅 康弘 日本大学, 薬学部, 教授 (70383726)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ストレス / コルチコステロン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、過度なストレス刺激による適応障害モデルマウスへの抑肝散投与が情動行動の異常を改善することを明らかにしている。本研究では、抑肝散やストレス症状に用いられる漢方薬の詳細な作用メカニズムを解明することで、ストレス刺激が誘発する適応障害に対して、安全性が高く、有効な薬物治療法の提唱を目的とする。 本年度は、マウス海馬神経細胞由来の株化細胞であるHT22細胞を用いて、ストレス負荷により脳内で上昇することが知られているコルチコステロンが誘発する神経毒性に対して、保護効果のある漢方薬の探索を行った。 まず、HT22細胞を用いて、コルチコステロンと抗酸化剤であるN-アセチル-L-システイン(NAC)の併用が、神経細胞に及ぼす影響を検討した。その結果、NACはコルチコステロンによる細胞生存率の低下を抑制し、コルチコステロンの誘発する神経毒性には酸化ストレスが関与することが示唆された。次に、ストレス症状に用いられている抑肝散、加味帰脾湯、加味逍遥散、柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏厚朴湯が、コルチコステロンの誘発する神経毒性に及ぼす影響を検討した。その結果、抑肝散、加味帰脾湯、加味逍遥散、柴胡加竜骨牡蛎湯は、コルチコステロンによる細胞生存率の低下を抑制しなかったが、半夏厚朴湯は、コルチコステロンによる細胞生存率の低下を抑制した。また、コルチコステロンが誘発する死細胞数の増加も、顕著に抑制することを見出した。以上より、半夏厚朴湯はグルココルチコイドの上昇が関与する神経障害を抑制することで、適応障害を改善する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、コルチコステロン処置によりストレス適応障害を模した神経細胞において、神経保護効果のある漢方薬の選別を行った。その結果、漢方薬が選別できたため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
半夏厚朴湯は、コルチコステロンの誘発する神経細胞死を抑制したことから、保護効果を持つ半夏厚朴湯の構成生薬や含有される成分の探索を行う。また、情動行動の異常が認められる適応障害モデルマウスを作成し、半夏厚朴湯が情動行動の異常に影響を及ぼすか検証するとともに、血清コルチコステロンや海馬の神経に影響を及ぼすか検討する。さらに、脳内でのユビキチンリガーゼの発現やユビキチン化タンパク質の発現に及ぼす影響を評価する。
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Causes of Carryover |
試薬等の消耗品が当初の予定額よりも低価格にて購入が可能となったため。研究計画に大きな変更はないが、次年度使用額を令和5年度請求額と合わせて免疫沈降法、Western blot法に使用する抗体および消耗品費用として使用する。
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