2021 Fiscal Year Research-status Report
リアクティビティベースドプローブによる漢方薬調製時に生じる化学反応の解析
Project/Area Number |
21K06621
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Research Institution | Yokohama College of Pharmacy |
Principal Investigator |
酒井 佑宜 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (70588095)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 漢方薬 / 化学プローブ / 化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施に則り、リアクティビティーベースドプローブを合成した。母格をシンナムアルデヒドとする桂皮プローブに関しては実験計画通りに、m-クマル酸を出発物質に用いて合成した。まず、カルボキシ基をメチルエステル化したのち、別途合成したリンカー部分をカップリングした。Boc 基を除去したのち、検出用官能基となる4-ブロモピリジンカルボン酸を縮合し、プローブの炭素骨格部分を構築した。最後に、メチルエステル部分を還元し、得られたアリルアルコールを酸化することで、目的の桂皮プローブを合成した(5段階、総収率28%)。また、原料にo-クマル酸を用いて同様の合成を行い、リンカー結合位置の異なるプローブも合成した。さらに、リンカー部分を有さず、直接検出用官能基と結合したプローブも合わせて合成した。一方で、麻黄プローブに関しては、光学異性体を作り分ける目的で、グリシドールを出発原料に合成を行った。グリシドールの水酸基をブロモベンジルエーテル化し、検出用の部分構造を導入した。ついで、メチルアミンを用いてオキシランの開環を行い、再結晶を行うことで麻黄プローブを得た(2段階、40%)。これらの各プローブはそれぞれ、1.0g 以上のスケールで合成した。 次に、合成したプローブを用いた解析に着手した。すなわち、漢方薬中での化学反応を検出するために、プローブを加えて漢方薬を煎じ、その化学変化の解析を試みた。漢方薬は、化学プローブを加えないものも作成し、それぞれ、凍結乾燥エキス、分液酢酸エチル相エキス、分液水相エキスの3種類を作成した。現在は、作成したエキスについてそれぞれ ESI-MS での分析によるエキス間の比較を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに、化学プローブの合成法を確立し、4種類のリアクティビティベースドプローブを合成した。また、これを用いた漢方薬の成分解析にも着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したリアクティビティーベースドプローブを用いて、桂枝湯、麻黄湯などにおける化学反応の解析を進める。具体的には、プローブや構成生薬の量などを変更したエキスを種々作成し、マススペクトルでの解析を行う。また、昨年度大学に導入されたESI-MSを用いた解析に合わせて、検出用官能基などを変更したプローブの合成、検討も進める。
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Causes of Carryover |
本年度は、合成経路の確立がスムーズであったため、試薬等の出費が計画より抑えられた。それらの請求分に関しては、昨年末大学に設置された ESI-MSに適した検出用官能基を有する化学プローブの合成への使用を計画している。 また、昨年度の計画では、情報収集のための学会参加を予定していたものの研究の進捗などを鑑み取りやめた。その分、本年度は日本生薬学会、薬学会年会の2回の学会参加を計画している。
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