2022 Fiscal Year Research-status Report
甘草配合漢方方剤の安全使用に向けた薬物動態データベースの構築
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21K06623
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
能勢 充彦 名城大学, 薬学部, 教授 (60228327)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 甘草配合漢方処方 / グリチルリチン / グリチルレチン酸 / 血中濃度 / 腸内細菌叢 / βグルクロニダーゼ / オウゴン / バイカリン |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度において、甘草配合漢方処方10種をマウスに経口投与して血中GA濃度を測定し、薬物動態パラメータのうち、血中濃度曲線下面積(AUC)は甘草配合量やグリチルリチン(GL)としての投与量とよい相関性を示す一方で、最高血中濃度(Cmax)との間には甘草配合量やGL投与量との相関性は認められないという結果を得ていた。本年度は、マウスの盲腸内容物から調製した腸内細菌叢溶液を用いたGL加水分解反応とGAの薬物動態学的パラメータとの関連性を検討した。 雌性BALB/cマウスの盲腸内容物を取り出し、10容量の100mM酢酸緩衝液(pH=5.6)を用いて懸濁液を作製した。この懸濁液を窒素存在下、37℃、60分振とう培養し、20×g、1分間の遠心処理により食餌性残渣を取り除いて腸内細菌叢溶液とした。この腸内細菌叢溶液にGLとして30μgとなるように10種の甘草配合漢方エキスを添加し、37℃で30分間反応させた。1M HCL溶液を添加して反応を停止させ、内部標準として2-methyl anthraquinoneを添加し、酢酸エチル抽出を行い、HPLCサンプルとした。GL標準品(30μg)を用いて同様に測定し、各甘草配合漢方エキスのGL加水分解反応を標準品を基準とした百分率で示した。 その結果、10種の漢方エキスのGL加水分解活性は標準品と比較して6.5%から36.6%を示し、各処方のマウスにおけるCmaxとの相関を検討したところ、r=0.6822(p=0.0298)と良好な相関性を示した。この結果は、甘草配合処方を服用した際に消化管内でのGL加水分解反応がGAのCmaxに強く影響することを示している。そこで、この加水分解反応を他の処方でも検討し、オウゴンの配合がGL加水分解反応を阻害すること、またその主成分であるバイカリンがGLの加水分解反応を非競合的に阻害することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度問題となった納入時期の違いによるマウスの腸内細菌叢の変動について、種々検討したところ、時期よりも生産支所の違いが大きく影響することが明らかとなり、同一生産支所で繁殖飼育するマウスを購入すれば、ある程度安定した結果を得ることができることが確認された。そのため、現在は安定した条件で実験ができるようになり、甘草配合漢方エキスのマウス経口投与時の血中GA濃度測定を進めることができている。 また、血中GA濃度に影響を与える因子として第一に考えていた腸内細菌叢によるGL加水分解活性とCmaxとの間に相関性が認められたことから、甘草配合漢方エキスを33処方にまで拡大して検討することができた。さらに、GL加水分解活性がGL標準品の10%以下のもの10種のうち、9種にオウゴンが配合されていることから、GLと同様に糖部にグルクロン酸をもつバイカリンの影響を検証して、予想通りではないものの、非競合阻害であることを見出した。 以上の結果により、甘草配合漢方処方投与時の血中GA濃度に影響する構成生薬としてオウゴンを、また成分としてバイカリンを確定させることができ、本研究計画は順調に進行していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、甘草配合漢方エキスをマウスに経口投与し、血中GA濃度推移を測定している。本年度の検討により、GAのCmaxに腸内細菌叢による加水分解反応がよい相関性を示したことから、消化管吸収における構成生薬やその成分の影響については検討を行っていない。 今後は、血中GA濃度推移の測定例を増やすとともに、必要であれば、GAの消化管吸収に及ぼす構成生薬の影響も検討していきたい。 また、消化管内におけるGLの加水分解の程度が処方により異なり、血中GA濃度にも影響するということは、その薬理作用の発現にも影響することを示唆している。漢方薬の薬効については、「証」と呼ばれるレスポンダー・ノンレスポンダーの存在が知られており、また薬効発現には腸内細菌叢をはじめとする腸内環境の重要性について言及するような報告があるものの、系統立てて証明したものは少ないと思われる。GLの加水分解に関わる腸内細菌やβグルクロニダーゼの同定も十分ではないことから、それらを明確にする方向へと進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
甘草配合処方のマウスへの経口投与実験が少し遅れ気味であり、腸内細菌叢によるグリチルリチン加水分解活性におよぼす構成生薬の影響を検討する実験が前倒しになって実施したために差額が生じた。年度の変わり目を通じて、血中濃度測定実験は進行しており、次年度使用額となっている。
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Research Products
(2 results)