Outline of Annual Research Achievements |
本年度は, 抗結核薬D-サイクロセリン(D-CS)の生合成経路で見出された新規アルギニン水酸化酵素DcsAについて, 組換えタンパク質を用いた実験を利用することにより, その活性発現に必要な電子伝達系を構成するフェレドキシン(FDX), および, FDX還元酵素(FDR)を同定することを目的として研究を実施した。 最初に, D-CS生産菌の染色体DNAに存在するFDXをコードする遺伝子(sla_0278, sla_0641, sla_0828, sla_1644, sla_2106, sla_5080, sla_5828)およびFDRをコードする遺伝子(sla_0456, sla_5644)について, それらの発現プラスミドの構築を行った。当初の実験計画では, PCR増幅した遺伝子を使用することとしていたが, 大腸菌において発現させる際のコドンバイアスを考慮し, 全て大腸菌のコドンに最適化した人工合成遺伝子を使用することとした。まず, 人工合成した9個の遺伝子をそれぞれ, pUCFaベクターに挿入したキメラプラスミドを構築した。続いて, 構築したキメラプラスミドを制限酵素NdeIおよびXhoIで切断することにより, それぞれの遺伝子を切り出した後, 同制限酵素で切断した発現ベクターpET-21a(+)と連結することで, 9個の遺伝子の発現プラスミドを構築した。 次に, 各タンパク質の発現大腸菌株の作製を行った。構築した9個の発現プラスミドについて, ケミカルコンピテントセルを用いた方法により, それぞれ大腸菌BL21(DE3)株に導入し, 9遺伝子の発現大腸菌株を作製した。 以上, 本年度においては, FDXおよびFDRをコードする遺伝子について, それらの大腸菌における発現系の構築まで完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画においては, 2022年度が終了するまでに, 1) DcsAの電子伝達系を同定する, 2) 同定した電子伝達系をコードする遺伝子, dcsA遺伝子およびヒドロキシアルギナーゼをコードする遺伝子(dcsB)を大腸菌に導入し, 大腸菌を宿主とした抗癌剤ヒドロキシウレアの生産系を構築することとしている。本年度(2021年度)において, どこまで完了させるかについては, 研究計画に具体的に記述していないものの, 2022年度終了までの研究内容を考慮し, 本年度において1)の研究の目途が立つところまで完了させることを想定していた(この想定に基づき, 予算を計上している)。具体的には, FDXおよびFDRの大腸菌における発現系を構築するとともに, 発現したタンパク質の精製まで完了させる予定であった。しかしながら, 本年度においては, FDXおよびFDRの大腸菌における発現系の構築は完了したものの, 発現したタンパク質の精製までには至らなかった。以上のことから, やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗はやや遅れてはいるものの, 本研究を遂行する上での問題は発生していない。したがって, 今後の研究の推進方策については, 当初の研究計画から変更はない。ただし, 進度がやや遅れていることから, 研究のスピードアップが必要であると考えている。次年度においては, 大腸菌で発現させたFDXおよびFDRの精製をできる限り早く完了させ, DcsAの活性測定に速やかに移行する。
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Causes of Carryover |
理由 「現在までの進捗状況」で記載したように, 本年度においては, FDXおよびFDRの大腸菌における発現系の構築は完了したものの, 発現したタンパク質の精製までには至らなかった。そのため, 大腸菌で発現させたタンパク質の精製に必要な物品を購入するための予算が, 次年度繰越金として生じた。 使用計画 繰越金については, 次年度において, 大腸菌で発現させたタンパク質の精製に必要な物品を購入するための予算として, 速やかに執行する。繰越金以外の予算については, 研究計画通りに執行する。
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