2022 Fiscal Year Research-status Report
組織特異的DNAメチル化領域に着目した大麻の新規バイオマーカーの開発
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21K06639
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
山室 匡史 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (80646555)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大麻 / DNAメチル化 / バイオマーカー / WGBS解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、前年度に抽出した大麻草の花穂、葉、根、茎、種子のゲノムDNAを用いて、全ゲノムバイサルファイトシークエンス(WGBS)解析を行い、各部位のメチル化プロファイルを比較するとともに、各部位に特徴的な組織特異的メチル化領域の探索を行った。 WGBS解析の結果、5部位の試料から合計1,769,878,310リードの情報が得られた。リファレンスゲノムにマッピングされた408,454,416リードについて、全試料で10リード以上読まれたメチル化候補配列(CpG:シトシン-グアニンと連続する配列、CHG:シトシン-グアニン以外-グアニンと連続する配列、CHH:シトシン-グアニン以外-グアニン以外と連続する配列の3種類)は計20,139,816箇所(CpG:1,955,706、CHG:2,971,386、CHH:15,212,724)存在した。各試料におけるメチル化率を算出し、試料間で25 %以上の差異が見られた355,737箇所(CpG:161,288、CHG:109,967、CHH:84,482)のメチル化サイトを抽出した。各試料のメチル化プロファイルを比較したところ、①花穂と葉のメチル化プロファイルは類似している、②種子のCpGおよびCHG配列はそれぞれ他の部位のCpG、CHG配列よりメチル化率が低い、③種子のCHH配列は他の部位のCHH配列よりメチル化率が高い、といった傾向が認められた。さらに、各部位の「組織特異的DNAメチル化領域」を探索したところ、709箇所(花穂:4、葉:10、根:6、茎:546、種子:143)のマーカー候補となるメチル化サイトが発見された。各部位に特異的なDNAメチル化領域が発見されたことから、当初の目的通り、大麻関連製品における違法部位(花穂・葉・根)の混入を確認するためのマーカー開発が可能であることが期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度回収されたDNAの量と純度に不安があり、次世代シークエンサーを用いたDNAメチル化解析の手法変更を検討する局面があったが、可能な限りの濃縮や精製を行い、従来の予定通りである「全ゲノムバイサルファイトシークエンス解析」を敢行した結果、首尾よくデータが得られた。研究全体の要である大規模なDNAメチル化プロファイルのデータが得られたことで、目的達成のための目途が立ったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施した全ゲノムバイサルファイトシークエンス解析によって得られたデータを利用して、マーカー候補の選定を行い、その検出法の確立を目指す。具体的には、組織特異的DNAメチル化領域709箇所について、近傍のDNA配列情報を参考としながら絞り込みを行い、まずは、最も単純な検出系の構築が期待される「メチル化特異的PCR法」のためのプライマーを設計し、大麻の各部位から抽出したDNAサンプルを利用してその適用可否を評価していく。 また、並行して、様々な大麻関連製品からのDNA抽出法の検討を行う。昨年度より計画していた「人工DNAの添加回収実験によるDNA抽出性能の評価」に関して、抽出性能を正確に評価できる実験系の構築ができたとは言い難い状態であり、引き続き、オイル状製品製品の性状に応じた有効性の高いDNA抽出手法を模索していく予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度は、全ゲノムバイサルファイトシークエンス解析によって得られたデータに対して、専門のバイオインフォマティシャンによる高度な解析を委託するための経費が必要となり、次年度に計上していた直接経費から前倒し請求を行った。さらに詳細な追加解析を委託することも見込んで前倒し請求の金額を設定したが、追加解析の委託タイミングが令和5年度にずれ込んだこともあり、次年度使用額が生じることとなった。 令和5年度は、高度な解析によって選定されたマーカーについて、安定的に検出するシステムの構築やダウンストリーム解析が予定されていることから、研究遂行に必要な研究用消耗品や設備備品の購入を行う予定である。
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