2021 Fiscal Year Research-status Report
酸化還元電位を新指標とした光不安定医薬品のテーラーメード製剤化
Project/Area Number |
21K06654
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
小幡 徹 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (20324080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 伸一郎 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (20537237)
脇屋 義文 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (40410360)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光分解 / クロルプロマジン / フェノチアジン / PARAFAC |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品は多様な構造をもつ有機化合物であるため、環境因子や医薬品同士の相互作用により変化が生じるものが多い。とくに光は医薬品の品質に影響を及ぼす環境要因の一つであり、薬効を低下させるだけでなく、時に毒性を示す光分解物を生成する。したがって、医薬品の光安定性の評価は、医薬品を有効かつ安全に活用するために不可欠であり、高品質な製剤の製造や医療ニーズに対応した薬物療法を実践する上で必須である。医薬品の品質評価には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS)等が広く用いられている。これらの手法は、高感度かつ高精度であることが知られている反面、コストが高く、操作が煩雑である。一方、EEM-PARAFAC とは、励起波長・蛍光波長・発光強度を3次元的にプロットしたEEMスペクトルと、複数の蛍光成分を多変量解析により分離するParallel Factor Analysis (PARAFAC)を組み合わせた手法であり、環境分析や食品の品質評価に利用されている。しかしながら、本手法を医薬品の品質評価に応用した報告はほとんどない。そこで、本研究では光安定性が低いことが知られているフェノチアジン系医薬品を原薬とし、EEM-PARAFACによる光安定性の評価法の構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光指紋は、励起蛍光マトリックス(EEM)と呼ばれ、励起波長と蛍光波長の組み合わせで発する蛍光強度を網羅的に計測する手法で、指紋のような等高線は成分特有のピークとなる。また標準的な成分分析手法に比べて迅速、低コストかつ、高感度であるためサンプル量が最小限ですむという特徴がある。そこで本手法に多変量解析のParallel Factor Analysis (PARAFAC)を組み合わせたEEM-PARAFACを活用し、制吐剤のフェノチアジン系抗精神薬の光安定性の評価法の開発に取り組んだ。まずクロルプロマジン塩酸塩は250 nm、310 nm付近に吸収極大、450 nm付近に蛍光極大を示した。続いてクロルプロマジン塩酸塩をメタノール溶液中、酸素存在下で、365 nmのLED光源を用いた光反応を行い、その反応過程をEEMで追跡し、さらにPARAFACにて成分分離を行った。その結果、光照射時間の延長に伴い、クロルプロマジン塩酸塩に由来する450 nm 付近の蛍光が減弱し、蛍光波長(em)375 nm/励起波長(ex)250 nm、275 nm、335 nmの等高線ピークと、em 355 nm/ex 240 nm、290 nmの等高線ピークの蛍光体が出現し、クロルプロマジン塩酸塩は光分解することで、2成分の化合物を生成するこことがわかった。続いて光分解物の構造を同定するため、生成物を単離した後、構造解析を行ったところ、フェノチアジンスルホキシド体とカルバゾール構造を有する生成体であることがわかった。以上のことから、本研究の進捗はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、EEM-PARAFACが、医薬品の光安定性の評価に応用できることを見いだし、従来のHPLC法などの試験法と比べて、簡便かつ迅速な分析・データ解析手法であることを明らかとした。一方、得られた成果は定性的であるため、今後は、EEM-PARAFACを利用した医薬品の光安定性について、定量的な面から調査する。特に、フェノチアジン系医薬品の光分解反応を速度論的に解析することで、EEM-PARAFACの有用性を明らかにする。また医薬品の光分解には、酸化還元反応によるラジカル種の生成が大きく関わっている。したがって、フェノチアジン系医薬品の光分解経路をラジカル反応の観点から解明し、光によって生成したラジカル種の酸化還元電位を精査することで、物質間における光分解の起こりやすさを数値から判断し、製剤化に利活用できるデータシートの作成にも着手する。また原薬の光分解や相互作用を抑えるには,原薬と添加剤の酸化還元電位の大小から適切に組み合わせを選び、混合する必要がある。そこで酸化還元反応の分解経路で進行する原薬と医薬品添加剤の水溶液や有機溶媒中における酸化還元電位を電気化学的測定装置にて網羅的に解析する。
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Causes of Carryover |
計画初年度であり、現有保有物品で対応したため使用予定金額より少なかった。次年度は研究をさらに推進するために、ガラス器具や通常試薬等の消耗品を予定通りに支出する計画である。
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