2022 Fiscal Year Research-status Report
内因性AGEによる組織リモデリング増悪化機構の解明と新規標的治療法の創成
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21K06657
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
森 秀治 就実大学, 薬学部, 教授 (50220009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊村 隆男 就実大学, 薬学部, 准教授 (40425137)
渡邊 政博 就実大学, 薬学部, 講師 (10758246)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 炎症 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症の遷延化は,動脈硬化などの生活習慣病を惹起する重大な危険因子である。しかしながら,これらの病態に対する根治的な治療法は未確立のままであり,超高齢化社会を迎えた現代医療が取り組むべき最重要課題である。申請者らは,炎症病巣の局所に複数の内因性AGEsが出現し,これらが炎症の過剰亢進を介して病巣拡大に大きく関与することを見出している。一方で,内因性AGEsの存在様式や相互作用因子の実体,相互作用に伴う機能制御と病態生理学的意義については,ほとんど解明れていない。本研究において,AGEsを不溶性担体に担持させた親和性担体を調製し,AGEsと相互作用し得る生体因子の網羅的探索研究を行った結果,AGEsに高い結合親和性を示す一連の細胞性因子ファミリーを見出した。これらをタグ付き昆虫細胞発現系で内毒素フリーの組換え体タンパク質として発現させ,高純度の可溶性標品を調製した。得られた標品を用いてDCF法による相互作用解析を行った結果,本因子はAGEsのみならず他のDamps分子とも直接的に結合し複合体を形成することが見出した。そこで,このようなDamps分子への結合および複合体形成と行った現象が炎症応答にどのような効果をもたらすのかについて解析を行った。マクロファージ様RAW264.7細胞を用いて炎症応答に及ぼす機能解析を行ったところ,上記の細胞性因子は因子自体に有意な炎症応答促進作用は無かったものの,その一方で強い炎症促進作用を示すHMGB1-LPS共刺激によって誘導されるTNF-a mRNA発現亢進を有意に抑制反応することが明らかとなり,見出した細胞性因子は直接的相互作用を介してDampsによる炎症応答に影響与える新規Damps調節因子である可能性が示唆された。今後は,この制御反応の分子メカニズムについて詳細な解析を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,Dampsと直接的に相互作用し得る細胞性因子を新たに見出し,これらがDampsと複合体を形成することによってDamps誘導性炎症応答の制御に働いていることを細胞レベルで明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出した細胞性因子とDampsとの機能性複合体形成に基づく炎症制御反応を分子レベルで詳細に検討するとともに,炎症病巣における複合の存在証明の究明を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
理由)本研究で見出した内因性AGE結合因子の組換え体標品を調製するために必要であると予想していた実験条件設定を比較的短期間で済ませることができたこと,更に物品購入の値引きなども加味することができたため,次年度使用額が生じることとなった。一方で,コロナ禍による物流の遅延によって必要とする物品調達が順調に進まなかった場合もあり,この点も次年度使用額が発生する理由につながった。 (使用計画)次年度の研究費と組み合わせ,複合体形成に伴う機能制御反応の分子レベル解析に必要な物品の調達をより円滑に行うために,購入計画を可能な限り綿密に立てて研究を遂行していく予定である。
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