Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 低分子化合物を用いて比較可能な肝機能障害モデル群を樹立することを目的とする。2021年度, 2022年度に2種類のRNA-seqデータの取得, 解析をそれぞれ行い, 2023年度は同モデル群を用いた応用研究に取り組んだ。 免疫細胞比率推定手法(Deconvolution法)は組織のトランスクリプトームデータをメインに, 解析対象の免疫細胞のトランスクリプトームデータを補助的に使用し, 免疫細胞比率を推定する手法である。しかし, 一般に血液を対象に性能評価がなされており, 実質細胞など多様な細胞も存在する組織での精度は不明であった。そこで取得したマウスのデータセットを用い, 組織特異的なDeconvolutionモデルを構築したところ, 公共データベースより入手したデータより, アセトアミノフェン単回投与の72時間後に好酸球の浸潤が上昇することが推定された。実際に同一の条件を当研究室で再現したところ, 確かに好酸球浸潤が確認された。一方, 組織特異性を考慮しないモデルでは好酸球の挙動は推定できなかったことから, 組織特異性の重要性が明らかとなった。組織に適用が可能な場合, Open TG-GATEsなどの大規模毒性データベースは有用なデータソースになると考えられるが, Deconvolution法適用時の種間差については知見が存在しなかった。そこでヒト, マウス, ラットのデータをそれぞれ用い, 種差の影響を評価したところ, Open TG-GATEsなどラットのデータを入力とするときの性能は, 我々が取得したラットのデータを補助的に用いた場合が最も高いことが示された。以上よりDeconvolution法で用いる補助的データの種差を考慮することが推定精度に重要であることが示された。これらの成果はNARGAB, Toxicol Sci.などの国際誌に採択された。
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