2021 Fiscal Year Research-status Report
超分子を用いた疾患および標的組織選択的かつ全身投与可能なゲノム編集技術の構築
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21K06672
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
本山 敬一 熊本大学, 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター, 教授 (50515608)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / ロタキサン / 超分子 / シクロデキストリン |
Outline of Annual Research Achievements |
CRISPR-Cas9 は、革新的なゲノム編集技術であるが、安全性に優れる非ウイルキャリアによる全身投与可能なゲノム編集に成功した事例はほとんどない。ゲノム編集誘導のためには、近年、Cas9 タンパク質と sgRNA の複合体 (Cas9 RNP) をあらかじめ形成させ、細胞内に直接導入する方法が試みられている。そこで我々は次世代型 Cas9 RNP キャリアとして、ポリロタキサン (PRX) という超分子素材に注目した。PRX とは、複数の環状分子に貫通した軸分子の両末端を嵩高い分子で塞いだ超分子化合物である。PRX は柔軟性が高く、軸分子に沿って環状分子が回転・移動できるため、環状分子にアミノ基を導入すると、タンパク質や核酸の立体構造に合わせて変形し、オンデマンドにアミノ基を提示する結果、非常に高効率に複合体を形成可能性である。本研究の目的は、アミノ化ポリロタキサン (NH2-PRX)を用いて、全身投与で疾患や標的組織特異的に Cas9 RNP をデリバリー可能な基盤技術を構築し、安全かつ高効率な in vivo ゲノム編集技術の開発を行うことである。 本年度は、Cas9 RNP キャリアとしてのNH2-PRXについて、その分子量、環状分子の貫通数およびアミノ基の修飾数などを変更したりして、構造最適化を行った。さらに、細胞内で積極的なCas9 RNPのリリースを達成するために、NH2-PRXに種々の結合様式(ヒドラゾン結合、エステル結合、アセタール結合など)を導入して、更なる構造最適化を行った。その結果、ジスルフィド結合とカルバメート結合を導入することにより、細胞内でエンドソーム脱出効果およびCas9 RNPのリリース能を獲得することに成功した。次年度以降は、最適化したNH2-PRXにリガンド修飾を施し、細胞へのターゲティング獲得を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はゲノム編集分子であるNH2-PRXの構造最適化を検討しており、研究計画に沿っておおむね順調に展開することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、がん細胞リガンドとして葉酸を修飾したがん標的 L-PRX (TL-PRX) および肝実質細胞リガンドとしてラクトースを修飾した肝臓標的 L-PRX (LL-PRX) を新規に調製し、各複合体の細胞内取り込み効率を、それぞれヒト遺伝性卵巣がん細胞 (BRCA1 変異, SKOV3) およびヒト肝がん細胞 (HepG2) において評価することで、リガンドの修飾率を最適化を試みる。さらに、動物モデルでゲノム編集による治療効果および安全性について評価を行う予定である。
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