2022 Fiscal Year Research-status Report
ビッグデータ解析と基礎研究を融合した慢性腎臓病の機序解明と新しい治療戦略開発
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21K06682
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
堀ノ内 裕也 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (30716593)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 医療ビッグデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、医療ビッグデータ解析と基礎的検証の両面から、慢性腎臓病(CKD)の新規治療戦略の開発につながる基盤を確立することを目指しています。 核内受容体であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)は、脂質代謝において中心的役割を担いますが、CKD患者腎臓においてPPARαの発現が低下していること、PPARα欠損マウスにおいて老化に伴う腎線維化が増悪することが報告されています。PPARαアゴニストであるフィブラート系薬剤は脂質異常症治療薬として用いられていますが、主に腎排泄型薬剤のため、CKD患者へ使用の際は腎機能低下に伴う副作用リスクの増大に注意が必要です。一方、選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)であるペマフィブラートは従来のフィブラート系薬剤と異なり、PPARαに対して高い選択性をもち低用量から活性化する胆汁排泄型薬剤であるため、CKD患者において効果が期待できます。そこで、本研究ではCKDにおけるペマフィブラートの腎保護効果を検討しました。 まず、有害事象自発報告データベースFood and Drug Administration(FDA)Adverse Event Reporting System(FAERS)を用いて、従来の腎排泄型フィブラート系薬剤の腎臓に対するリスクを評価しました。結果、従来のフィブラート系薬剤使用患者おいて、クレアチニン値の増加などの有害事象の報告割合が有意に大きいことが明らかとなり、従来のフィブラート系薬剤が腎機能に悪影響を及ぼすことが示唆されました。そこで次に、アデニン誘発CKDマウス(CKDマウス)を用いて、ペマフィブラートの腎保護効果を検討しました。ペマフィブラート投与によりCKDマウスにおける腎機能低下、貧血、腎線維化などが抑制され、ペマフィブラートのCKDに対する腎保護効果が示唆されました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度、FAERS解析から従来のフィブラート系薬剤(フェノフィブラート、ベザフィブラート)に関する有害事象報告において、糸球体濾過率の低下、クレアチニン値の増加などの有害事象の報告割合が有意に大きいことを明らかにしました。また、ペマフィブラート投与は片側尿管結紮誘導腎線維化モデルマウス腎臓において、増加した細胞外マトリックス、炎症性サイトカイン遺伝子発現を抑制しました。さらに、ペマフィブラート投与はCKDマウスにおける腎機能低下、貧血、腎線維化、腎臓における炎症性サイトカインの遺伝子発現増加を抑制しました。 以上の研究成果を論文(Horinouchi Y et al. Life Sci. 2023)報告しました。 したがって、進捗状況がおおむね順調に進展していると判断いたしました。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、医療ビッグデータ解析と基礎的検証の両面からCKDの治療候補薬としてペマフィブラートの腎保護効果を検討しました。今後は、ペマフィブラートの腎保護効果の根底にある詳細なメカニズムを抗炎症作用や抗酸化作用などに着目して検討する予定です。ペマフィブラートのCKDマウスにおける腎性貧血に対する効果が認められたことから、そのメカニズムについても検討する予定です。また、2021年度にFAERS解析から同定したCKD治療候補薬の効果もCKDマウスなどで引き続き検討をする予定です。
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