2022 Fiscal Year Research-status Report
アンドロゲンを核とする内分泌系-肺-脳の臓器連関異常化によるCOPD病態増悪機構
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21K06683
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山内 淳史 福岡大学, 薬学部, 教授 (90341453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 慎介 福岡大学, 薬学部, 准教授 (10404211)
松本 純一 福岡大学, 薬学部, 助教 (10550064)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | COPD / テストステロン / 抗アンドロゲン薬 / フルタミド |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)の治療選択肢は気管支拡張薬による対症療法に限られ、その病態解明も十分には進んでいない。申請者らは最近、COPDモデルマウスの精巣を摘出してテストステロンを欠乏させると、COPDモデルマウスの肺気腫が拡大することを見出した。本研究では、テストステロン量低下を軸とした内分泌系-肺-脳の多臓器連関の異常化とCOPD病態の進展・増悪機構の関連について明らかにする。 昨年度までの研究実績として、(1)精巣摘出(ORX)およびPPE誘発COPDモデルマウスにおけるT細胞の肺浸潤と肺気腫の拡張および(2)同モデルマスにおける肺病変に対するプロピオン酸テストステロンの保護的な作用を報告した。 本年度は肺気腫形成に対する抗アンドロゲン薬の作用を検討するため、フルタミド投与したC57BL/6JマウスにPPEを気管支内投与することで肺気腫形成に対するアンドロゲン受容体の役割について検討を行った。フルタミド投与マウスでは、vehicle投与マウスと比較して、PPE投与21日後における平均肺胞径が有意に増大した。また、PPE投与2日後におけるBALF中の炎症細胞数をフローサイトメトリーで計数したが、vehicle/PPE投与群とflutamide/PPE投与群に有意な差は認められなかった。これらの結果から、ORXによるテストステロン低下と抗アンドロゲン薬によるアンドロゲン受容体(AR)シグナル阻害では肺気腫形成の増悪機構が異なると推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCOPD薬物治療における抗アンドロゲン薬の安全性情報の基盤構築を目指し、フルタミドがPPE誘発肺気腫形成を増悪させることを明らかとした。現在はPPE誘発肺気腫形成に対する他の抗アンドロゲン薬の作用についても検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果として、ORXに伴うテストステロン低下だけでなく抗アンドロゲン薬投与によるARシグナル阻害もPPEが誘発する肺気腫形成を増悪させることを明らかとした。しかしながら、フルタミド投与マウスではORXマウスとは異なりPPE投与時の肺へのT細胞浸潤増加が認められなかった。ゆえにフルタミドによるARシグナル阻害が肺気腫形成を増大させる機序としてT細胞の肺への浸潤増加以外の肺気腫形成機構の存在が考えられる。 今後は、T細胞の定量的な解析だけなく、Treg細胞やTh17細胞などのT細胞サブセット解析や肺胞上皮細胞障害機構におけるARシグナルの検討も含めて研究を立案・計画する。 また、PPE誘発肺気腫形成に対するフルタミド以外の抗アンドロゲン薬の作用についても並行して検討をおこなう。
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Causes of Carryover |
2022年夏頃にコロナ感染の再拡大に伴い研究室活動の人数に制限が設けられたため、当初予定していた実験計画を行う順番を一部変更し予定していた金額を下回った。本年度に実施予定であった肺透過性の解析を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。
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