2021 Fiscal Year Research-status Report
天候変化により発症する片頭痛に対する五苓散の短期使用効果および無反応例の解析
Project/Area Number |
21K06693
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
石井 正和 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (30307061)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 片頭痛 / 五苓散 / 天候 / 治療反応性 |
Outline of Annual Research Achievements |
五苓散は片頭痛の予防効果が認められているが、急性期治療薬としても使用されている。急性期治療薬の誤使用で問題となる薬剤の使用過多による頭痛を発症した事例は報告されていない。本研究では、天候変化(気圧変動)で増悪する片頭痛の患者を対象に、五苓散の短期使用(予兆を感じた時からの服用)による治療効果とその治療反応性に関与する因子を明らかにすることを試みた。国際頭痛分類第3版に基づいて片頭痛と診断された患者のうち、気圧の変動で増悪する片頭痛を有し、五苓散を処方された患者を対象とした。診療録より、五苓散初回処方時の年齢、性別、合併症、既往歴、アレルギー歴、副作用歴、頭痛の特徴(初発年齢、罹患期間、頭痛部位、性状、随伴症状)と、効果判定などの情報を抽出した。五苓散の有効群は39名(70.9%)、無効群は16名(29.1%)であった。五苓散の短期間使用による有効率は70.9%と良好であった。今後は症例数を増やして解析を行いたいと考えている。 Yahoo! Japanリアルタイム検索を用いて、気圧変動が大きかった日に「頭痛」や「ロキソニン」などのツイート数が上昇していること、またピークは小さいが「五苓散」のツイート数の上昇も認められた。そこで頭痛持ちの人を対象に、気圧変動による頭痛の際に使用している鎮痛薬について調査を実施した。片頭痛群とその他の頭痛群に分けて解析したところ、片頭痛群ではその他の頭痛群と比較して、頭痛の原因として天候や気圧の変化をあげる方が有意に多かった。頭痛だけでなく、悪心・嘔吐、光・音・臭過敏などの症状も片頭痛群で有意に多く認められ、日常生活に支障をきたしている人が多かった。頭痛の対処として、ロキソプロフェンなどの市販薬を使っている方が多く、トリプタン製剤や五苓散を使用している方は、わずかだった。アンケート調査は当初は予定していなかったが、有益な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で医療機関への出入りが制限されたこと、研究を実施する予定だった学部生が研究に参加できなかったこと、職域接種業務に参加したこと、コロナ禍でオンライン授業に対応する必要があったことなど、当初予定していなかった状況となってしまったため、診療録を使用した調査は、予定していたようには進まなかった。一方で、最終年度に予定しているアンケートの実施に向けて、Yahoo!Japanのリアルタイム検索機能を用いて、気圧変動による検索ワード(五苓散)のツイート数の変化から、五苓散を気圧変化の頭痛に対して使用している予備情報を得て、アンケート調査で五苓散を鎮痛薬として使用している人が、気圧変化による頭痛に対して鎮痛薬として使用している方がどれくらいいるのかを把握するためにアンケート調査を実施した。その結果、多くの方が市販薬を使用していたが、五苓散を鎮痛薬として使用している方はわずかであることが確認できた。またこの調査とは別に、五苓散の予防薬に関する現状についても調査を行い、公表する予定となっている。これら情報は、最終年度に行うアンケート調査において有用な情報である。診療録調査以外の研究で五苓散の使用に関する情報収集ができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
診療録を使用した調査に関しては、症例数を増やし、有効率の信頼性をあげるだけでなく、治療反応性に関与している因子を明らかにし、五苓散の短期使用による治療反応性を予測するモデルを作成する予定である。また五苓散の頭痛予防薬としての使用状況について、アンケート調査した結果を公表したいと考えている。 研究課題申請時は、五苓散などの漢方薬は薬局薬剤師の判断で販売できる唯一の頭痛予防薬であった。2021年にこれまで処方薬だった頭痛予防薬のジメトチアジンがスイッチOTC医薬品の候補成分として申請され、関連学会からスイッチOTC化がふさわしいとの判断が示された。順調にいけば22年度中に頭痛予防薬として国内初のスイッチOTC医薬品となる。診療録を用いた研究では、薬剤師が頭痛患者に対して五苓散を勧める根拠となる研究結果を示すことはできるが、薬剤師を取り巻く環境が変化し、今後は予防薬が適応になる患者の判別や、治療薬の選択、予防薬の効果判定などを、薬剤師が行うことになる。そこで、五苓散やジメトチアジンの適応患者の選択や、予防効果の判定など、今後薬剤師に必要になると思われるスキルについて、現状と課題を明らかにする調査を実施する予定である。
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Research Products
(1 results)